15、星空の誓い
数日後、遼は誠のうちに泊まりに来た。仲直りのチャンス・・・・
しかし、謝罪の言葉がきりだせないまま、夏休みの課題をする二人。
「遼、ここ・・・教えてくれ」
「ああ・・・」
説明を始める遼の言葉も、耳に入らない。
「・・・・誠・・・聞いてる?」
「・・・・ああ・・・・」
「気にしてないよ。もう。誤解させてごめん。少しうらやましかったんだ。僕もあんなお父さんいたらいいなあ・・・・って」
先に謝られてどうしていいか分からない誠・・・・
「なんかさ、親父を盗られそうな気がしたんだ。変だろう?悪かったよ・・・・ごめん。」
いつもの、優しい遼の笑顔が目の前にあった。
「でも、凄い縁だよなあ・・・・」
「うん。」
「いいお父さんだね。」
「似てねーだろう。俺と。」
「でもないよ。」
「バイト終わったのか?」
「うん。楽しかったよ、誠、知ってるか?親父さん、社長のお抱え占い師だって」
「占い?何の占い?」
「タロットカード。」
(なにそれ????)
「頭脳明晰で通っている親父が・・・・占い???」
「当たると評判だよ。」
父親の意外な一面に、戸惑う誠・・・・・・・・
「そういえば・・・会社での親父なんて、想像もつかないなあ・・・」
誠の傍にいられるのもあと少し・・・・遼はふと瞳を伏せる・・・
「夏休みが終われば行くんだよなあ・・・・」
誠も寂しくなる・・・・・・
「最後に、いい思いい出が出来たよ」
ーそう・・・・いい思い出を・・・作ろう・・・−
色々先走ったけど、誠の結論はこの一瞬を大切にしたい・・・だった。
「でも・・あんまりだよなあ・・・俺の事、ほったらかして親父には毎日、会社で会ってたんだから・・・・」
「野々宮さんは・・・特別だから」
「俺は?」
遼は笑う・・・・・・
「野々宮さんは母さんの特別な人で、誠は僕の特別な人。」
特別・・・・・その響きが誠を酔わせる・・・
「遼の事、忘れないよ」
「僕も」
だんだん・・・・別れたくなくなる・・・・・・・
父の帰宅・・・夕食・・・沐浴後、誠は自室で遼を待っていた。
遼に一緒に入る?ーと風呂に誘われて、断ったことを少し後悔する・・・
(別に男同士だからいいんだけどなあ・・・やっぱ・・・ヘンだ・・・・俺・・・)
布団を二枚敷きつつ、誠はぶつぶつつぶやく・・・・・
「誠・・・茹蛸みたいだよ。のぼせたの?」
濡れ髪をタオルで拭きつつ、遼が入ってくる・・・・
妄想しつつ、赤面している自分に気付く。
「あ・・・・うん・・・長湯・・・しちゃって・・・」
焦る誠・・・
「あ・・暑いだろ・・ベランダに出よう。星がきれいだから」
涼しい風に、火照った顔を晒して心を落ち着ける誠・・・・
「ホント・・・キレイだ」
誠の隣で遼ははしゃぐ・・・
夜風が遼の髪からシャンプーの香りを運んで来た。何故かヘンに艶かしくて、どきまぎする・・・・
「誠・・・今日は、なんかヘンだ」
遼に見詰められて、誠は焦りつつも思い切って口を開いた
「何で・・・遼は・・・俺が好きなんだ?」
「誠は憧れだよ・・・・誠みたいな男になりたいと、いつも思っていた。」
月明かりに照らされる、遼の美しい顔・・・・・
「なんで俺みたいな・・・・お前の方がずっとキレイなのに・・・」
「キレイって言われるの嫌だった・・・女扱いされてるみたいで。だから・・男らしさに憧れたんだ。」
「そうか・・・ごめん。キレイなんて言って」
遼は照れたように笑った。
「ううん・・・・何故か、誠にキレイと言われるのは、悪い気しなかった。なんでかな・・・
誠といると、守られてる自分もいいかな・・って思っちゃうし、甘えたくなる。女みたいに・・
で、甘えてはいけないと自制してきた。ヘンだろ?」
「俺だって・・・ヘンなんだ・・・」
「どんな風に?」
再び、誠の顔が火照る・・・・
(言えない・・・)
俯いた誠の顔を遼は覗き込む。
「ねえねえ・・・どんな風に?」
そんな仕草はまるで女学生だ・・・・
「あんまりキレイで、ドキドキする」
「まさか・・・・」
周りは、キレイ、かわいいと、遼のことを褒めたが、自分自身はそうでもないと思っていた。
「おかしいだろ?女の子にさえ、こんなこと感じた事無かったのに・・・・」
「それは・・・光栄な事なのかなあ」
「嫌悪感は・・ないのか?」
うーん・・・・遼は考える・・・・確かに・・・
1、2年の頃先輩達にー付き合ってくれーと言われ、吐き気がするほどの嫌悪感を感じた・・・・・今は・・・・・
もしも・・・
遼は考える。誠がー俺と付き合ってくれーと言ってきたら・・・・・
不思議な事に、嫌悪感は無い。
「僕も・・・ヘンらしい。誠に限って嫌悪感は無い。多分・・・抱き付かれても、ちゅーとかされても、案外平気だと思う・・・」
(え!!)
遼の大胆な発言に誠は腰を抜かす・・・
「俺は・・・・平気じゃないよ」
「だよなあ・・・やっぱ〜」
はははは・・・・と笑う遼・・・・弄ばれている気がする誠・・・・・
「そのうち、お互い彼女が出来て・・・結婚するんだろうなあ」
遼は誠の方を向いて、しみじみつぶやいた・・・・誠も遼の方を向き直る・・・・・
先のことはわからない・・・・この感情は一時的なもので、憧れや友情の延長線上のものなのかも知れない。
でも・・・・
「でも・・・・俺は、お前の事忘れないよ。離れていても・・・・傍にいる。」
誠を見詰める遼の瞳が、優しく笑った・・・・・
「忘れないで・・・別れても、僕はいつかきっと、キミの傍に行く」
星空を背景に、遼の笑顔がまるで永遠の一瞬のように誠の心に突き刺さった・・・・・・
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