12、破局

 

昨日の夜、誠から夕方、公園で話したいと電話が来た。

遼は久しぶりに誠に会えることにウキウキしつつ、バイトを終えると、一通りの食料を買って学校の門の前で

誠の部活が終わるのを待ち、落ち合う。

そして二人、近くの公園のベンチに座った。

「はい。パンとか、おにぎりとか買っておいたから食えよ。」

部活後の誠の空腹を気遣い、遼は食料を準備していたのだ・・・・・

 

「はぁ....食った食った....」

ひとしきり無言で食べた後、誠は一息つく。

「で...話って何?」
「俺の親父と、どういう関係だ?」
あまりにも単刀直入な質問に、遼は誠の顔を覗き込む。

こんな話の為に自分が呼ばれた事に、遼はがっかりする・・・・

「バイトとバイト先の上司」
「それだけか?」
「親友の親父さん」
「他には?」
「何を言わせたいんだ?」
誠は何かを疑っている・・・・・・遼は表情こそ変えないが、疑心暗鬼に陥る・・・
「何か...隠してるだろ...」
「何も隠してないよ」
「俺の親父が、お前のおふくろに惚れてたって、知ってるだろ?」
「だから?」
遼の口元から笑みが消えた......
「僕が誠の親父さんの隠し子で、誠と異母兄弟だとでもいうのか?」
蒼白な誠の顔をみながら、遼はまくし立てる・・・・・

(どうして、そういう発想するかなあ・・・・・)
ため息をつき、遼は立ち去った......

 

(遼を怒らせた....もう会ってくれないかも....)

と、その後ろ姿を見つつ、誠はため息をつく。あまりにもストレートな自らの性格を恨んだ.....

 

あんまりな破局に落ち込む誠・・・・・・・・

 

「おかしいよ・・・あんた・・・」

夕食も食べずに部屋にこもる誠を、真澄は心配する。

「なんかあったね?」

誠は遼との事を打ち明ける・・・・・

 

 

「そりゃあ、あんたが悪いわ・・・・お前、俺の親父の隠し子?て訊いたのよ・・・・あんた、失礼じゃない!」

「そうだよなあ・・・・・」

更に落ち込む誠・・・・・・・・

「健さんのことも、美琴ちゃんのことも、冒涜したのよ」

「そういうことに・・なるなあ・・・・」

「バカちん」

誠は立ち直れなくなった・・・・・・・・

「母さんは・・・全然疑わないんだねえ」

「あんたのお父さんは、全然行動力のない人だからねえ。プロポーズの一つも出来ない人・・・

私が結婚しましょうって言わなきゃあ、そのままだったんだから・・・・それに、初恋というのは淡いものなのよ・・・・

手一つ握れないような」

つくづく、自分の軽はずみさに嫌気がさす誠。

 

(どうしよう・・・・)

 

遼を失った・・・・・・・・

 

喪失感だけが誠を襲う・・・・・・・・

 

とりあえず、異母兄弟でなかったことたけが今日の収穫・・・・・・

 

しかし・・・・・

 

その代価は大きかった・・・・

 

遼の心が離れてしまっては、何の意味もなかった。

 

            

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