5、添い寝
動揺しつつ一旦、腕枕しつつ横になる二人・・・・誠は心臓が飛び出しそうにバクバクしていた・・・・
「一年の時、図書室で誠と目があったことあるんだ。誠は覚えてないと思うけど・・・」
遼が覚えていた事に驚く誠。
「放課後、図書室から運動場を見ると、いつもサッカー部の練習しているのが見えて・・・・とりわけ背の高いセンターフォーワードが
目立っていて、いつも目で追っていた。ある日、そのセンターフォーワードが図書室で勉強する僕の後ろに立っていたんだ・・・・・驚いたよ」
(俺より・・・・遼が先だったのか・・・・)
ふっー
誠は笑う・・・・・
「覚えてるよ・・・巻町遼・・・お前の存在をあの日初めて知った。それからは全校集会の時にお前を探して目で追っていた。考えてみれば俺達はお互い意識しながら、そのまま2年間無言で過ごしていたんだなあ」
もったいない・・・・と誠は思う・・・・・
(もっと早く家に連れてきてたら、もっと進展してたかも・・・え?!)
焦る誠・・・・・・・・
「遠回りをして、やっと僕は誠にたどり着いた・・・・・でも、この分じゃあ卒業前にドイツに行かないといけなくなりそうだ」
「え?!」
「また・・・・会えなくなるね」
「遼・・・・」
遼の方を向くと。遼の横顔が間近に見えた。
「遠くから見詰めていられればいいと思った・・・・なのに、こうして近くなると離れたくなくなる。」
「行かなきゃ・・・ダメなのか?」
「母の願いだから・・・僕が父方の祖父母に認められる事が。麻生と言う父の姓を継ぐことが・・・そのためにドイツ語の特訓もしてきた」
遼の母は、ドイツ留学中に遼の父と出会ったと聞いている・・・・・
「親父さんはドイツ在住の日本人なんだろ?」
「うん・・・・お祖父さんはドイツで大きく成功したらしい。嫁は政治家の娘でないとダメだなんて思ってたらしい・・・」
「お前は秀才だし、男前だから気に入られるよ。やっぱ・・・・何処か気品があると思ってたんだ。親父さんの血を引いてるんだな・・・・」
形のいい横顔を見ながら誠は微笑む・・・・・
「でも、僕は父似じゃない・・・父はスポーツマンだったらしいよ。大学時代はサッカー選手でセンターフォーワードだった・・・・背が高くて体格も良かったらしい。だから・・・誠を見ていて・・・父さんを見ているような気がした・・・・・」
「我が家と逆の親子だなあ・・・・」
「うん」
と横を向いた遼の顔がアップになって、誠は固まる。ありえないほど顔が近づいている・・・・
(キスする時って、これくらい近づくんだろうなあ・・・・でも遼・・・肌も綺麗だ)
思わずその頬に触れてしまい、フォローできなくなった誠
「・・・お前・・・にきび一つ無いな・・・・」
やっとこさっとこ、そんな言い訳を言う。
「乾燥肌なんだ・・・」
思春期の男の暑苦しさや、脂っこさが無い・・・・・冷たい大理石のような少年・・・・・・
(触れたらひんやりすべすべしてそうだ・・・・・)
え!?
顔を背けて冷や汗な誠・・・・・
(俺・・・やはり変だ・・・・)
安らかに寝息を立てて眠る遼を眺めつつ、誠は遼の前髪をかき上げる・・・・・
閉じた瞳・・・・長い睫・・・・桜色の唇・・・
この感情がどういうものかわからないけど・・・・・・
いとおしい・・・・・・・・
しかし・・・・・・
(気になって眠れない・・・・・・・・・・・・やっぱ・・・・俺・・・変だ・・・)
近づく別れに少し胸が痛む・・・・・・・
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