4.動揺する安息所

 

「そうだったの・・・」

買い物から帰ってきた母に、遼のことを話すと、誠はソファーで眠る遼を見詰める・・・・

「ずっと眠ってなかったんだ・・・父方からは早く来るように言われてるし・・・・おふくろさんは具合悪いし・・・

爺さん婆さんたち、勝手だよなあ。反対しといて、今更跡継ぎが必要だからって・・・・遼の事・・・・」

台所で夕飯の支度をする真澄の後ろで、誠は愚痴る・・・・・

「お父さんとは・・・連絡とっていたの?」

「電話とか来てたみたいだよ。親父さんは引き取りたがってたし・・・結婚も勧められても断っていたみたいで、

もちろん子供は遼しかいない。」

「そんな状態で今まで反対し続けたなんて・・・・かなり頑固な御祖父さんねえ」

「でも、遼を見たら気に入るはずだ・・・・デキがいいから」

「今晩、ここに泊まるように言って・・・病院とお母さんの実家に、その事電話するわ」

誠は遼の携帯から病院の電話番号と、母が入院してから預けられている母の実家の電話番号を探し出した。

真澄はそこに電話した・・・・・・・

 

 

遼が家に泊まる・・・・・・・

誠には大事件だった

 

「父さんは・・今日・・・」

「夜勤でいない」

「じゃあ・・・・3人か・・・・・」

誠の心中を見透かしたように真澄は笑う

「嬉しい?修学旅行みたいだねえ・・・」

「・・・そんなんじゃないよ!」

照れ隠しに少し怒ってみる・・・・

 

 

 

「遼・・・・」

静かに目覚める遼・・・・まるでスリーピングビューティー・・・・

「外泊の許可取ったから今日は止まっていけ。色々あるけど・・・今だけは忘れろよ。身体がもたんからさあ・・・」

くしゃっー

髪を撫でる誠に、父親的なものを感じつつ、遼は少し笑う・・・・・

「なに?」

「誠・・・・父さんみたいだ・・・・」

ずっと・・・遼は父的なものを探して求めていたのかも知れない。そして見つけた父性・・・・・・野々宮誠・・・

誠といると安心できる・・・守られて、包まれている気がする・・・・・

その反面・・・・

甘えてはいけない、 という気持ちがブレーキをかける。

男だから・・・・強くないといけない。くじけるな、へこたれるな・・・・、自分で自分に科した枷・・・・・

母を支えて守る為に。

 

「高い高い〜してやろうか?」

誠がふざけて言う・・・・・・

「いいよ・・・・」

「おんぶは?抱っこは?」

遼から笑いが漏れる・・・・・お袋なのか、親父なのかわからない誠のキャラにあきれる・・・・・

「・・・・やっと・・・笑った・・・・」

えー

遼は誠を見詰める。

「知ってるか? 今日一日、全然笑ってないって・・・・・そりゃ、親の不幸に笑うのは不謹慎だけど・・・・・

お前の親父さんも、お前が元気で幸せなのを望んでるんじゃないか?」

遼の瞳に涙が溢れてくる・・・・・・・

「また泣く〜〜よしよし・・・・」

遼を抱きしめて背中をぽんぽん叩きながらあやす誠を見て、真澄は苦笑する・・・・・・

(誠は・・・・オカンキャラ?・・・・・)

 

遼には心の重荷を下ろせるところが必要だった・・・・・・かなり疲れていた・・・・・

 

誠は・・・・彼の安息所だった・・・・・

 

 

 

夕食を終え、二人は誠の部屋で布団をならべて敷いた・・・・

「にしても・・・・それ・・・でかいなあ・・・・」

誠のTシャツと短パンをかりて着ている遼を見て誠は笑う。

ぶかぶかだった・・・・・・・・・

「誠がでかすぎるんだよ・・・・」

背は低めだが、決してチビではないと言いはりたい遼・・・・

「何食ったらそんなにでかくなるのさ・・・・・親父さんも体格いいの?」

「いいや。背は高からず低からずで・・・痩せてる・・・なんか棒みたいだぞ」

誠からは想像もつかない・・・・・・・・

「スポーツマンなの?」

「いや。沈着冷静、頭脳明晰・・・・・クールでとおった人事部長」

(????????)

「俺とは 正反対。似てない親子なんだ。」

一度会ってみたいと思う遼だった・・・・・

 「誠は、親父さんのことどう思ってる?」

「尊敬してるよ・・・ボケと突っ込みの漫才親子だよ・・・・」

 ・・・・それもいいかも・・・と遼は思う・・・・・・

「うらやましいなあ・・・・」

「俺が一晩、親父になってやる!腕枕でも何でもしてやるぞ〜」

ははは・・・・遼は苦笑する・・・・・

「いいよ・・・・」

「何で?」

布団に寝転がり誠は右腕を伸ばす。

「ほら!こいよ〜」

「いいよ・・・・」

「ダメ!」

遼の腕を引いて無理やり自分の腕に押し倒す・・・・驚くほど近い距離に遼の顔があることに、誠自身が戸惑う・・・・・

ー先輩達・・・・巻町のこと狙ってるんだ・・・・−

中島の言葉が脳裏をかすめる・・・・・

「誠?」

誠の様子が変なことに気付き、遼は声をかける・・・・・

「ああ・・・」

我に返り起き上がる・・・・・

(待てよ・・・・だから・・・・俺は・・・今晩・・・ここで・・・遼と・・・一緒に寝る・・・・え〜〜〜〜!!!!)

 

動揺する自分に動揺するという、複雑な芸当をやってのけた野々宮誠・・・・・・・

 

(だから・・・・・合宿みたいなもんじゃないか・・・・落ち着け、うろたえるな野々宮誠〜!!!)

 

パニックの誠を不思議な目で見詰める遼・・・・・・遼の安息所・・・・誠はかなり動揺していた・・・・・

 

 

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