2、別れの予感

 

 

 

 あの日から、遼と誠は中間考査期間中の試験勉強をずっと一緒にしていた。

「俺の周り、サッカーバカばかりだから助かるよ〜」

といっても誠は物理、数学系はデキる方だった・・・・

「ねえ・・・誠は、どうして僕が気になったの?」

「さあ・・・綺麗な奴に見えて・・・・外見じゃないぞ。高貴さとか・・・神聖とか・・・」

体育会系の誠が、高貴や神聖に憧れるとは思わなかった。遼は意外だった・・・・・

「でも・・・だから近寄りがたかった・・・お前って、ほんとに王子様なんじゃあないか?」

(それなら、お前は白馬の騎士だよ・・・)

遼は誠を見詰める・・・・・・

「そんなに見るなよ・・・恥ずかしいじゃんか・・・」

美しい・・・と遼は思う。太い骨格の彫りの深い面立ち・・・・・男らしい、たくましさに満ちていた。

15歳とはいえ立派な”男”そのものだった・・・・

「明日までか・・・中間考査も・・・明日からは、俺は部活・・・お前は帰宅部・・・」

「待ってようか?部活終わるまで?」

「え?」

「生徒会・・・あるし・・・無い日は、図書室で勉強とかしてたら時間なんてすぐだよ。」

沈黙の時間が流れる・・・・・・

「・・・え?俺の事待っててくれるの!俺の為に?」

予想外の喜びように戸惑う遼・・・・

「いや・・・唯・・・一緒に途中まで帰るだけなんだけど・・・・」

「毎日?」

「うん・・・・」

「サンキュー!」

誠が、がばっと抱きついてきた。グランドでゴールの後チームメイトとよくしているように・・・・・

「少なくとも・・・俺の片思いじゃあなかったんだ〜」

とはしゃいだ後、我に返り

「あ、そういうことじゃあないからな。」

と付け足した・・・・・・

「判ってるよ」

遼は微笑む。言い寄ってきた先輩達のような嫌悪感は微塵も無い・・・・・・これは明らかな友情。それが心地いい。

この日々を失いたくなかった・・・・・・

 

 

しかし・・・・・・

 

ドイツからしきりに、父方の祖父母が遼を引き取りたいといってきた・・・・・

父と母は父方の祖父母の反対で入籍できなかった。

遼は母と日本で、父はドイツの一流企業の跡取りとして引き離された。身分違いと言う理由で・・・・

それが・・・・・今回父が病に倒れ、跡取り問題となり遼が探された・・・・・・

母と一緒でと言う条件で引き受けたが、その後、母も病に倒れドイツ行きは見合わせとなった。

 

しかし・・・・母が回復すれば行かねばなるまい・・・・・

 

 

それが、母にも自分にも最良の道であるから。

 

 

誠とは、別れなければならない。

 

近いうちに別れはやってくる・・・・・・・・

 

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