26

 

「だから・・・あの・・・」

寝室で悠太の尋問を受ける誠次郎、かなり困っている。

「大旦那さんにそんな事、話してどうするんですか!若旦那がそんなに口が軽いから、若旦那に秘密がないんですよ」

「いや、平次が、心配しててさあ〜お前やつれてるって・・・」

ふう〜

「若旦那に悪気がないのはわかりますが、私の立場は、なんなんですか」

悠太は半泣きになっている。

「で、さあ・・本当にアレが原因で悠太はやつれたのかい?」

・・・・・・・・・・・・・

「悠太・・・?」

「おやすみなさい」

おい・・・・・・・

「もしかして、私の事嫌いなのかい?だから、くっついていると寝られないのかい?」

(なんで、そこでボケるのかなあ・・・)

理解不可能な悠太

「嫌いじゃなくて、緊張するんです。」

「そうか、じゃあ・・・そっちでおやすみ」

かなりしょげている・・・・

「若旦那・・・私が傍にいて、そんなに熟睡できるんですか?」

「うん!」

・・・・・・・・・・・・・

どう理解していいか判らない・・・

ーあいつ大人子供だから・・ややこしいぞー

平次が悠太にそう言った・・・

「若旦那、思春期はありましたか?」

げえ・・・誠次郎は、極端に嫌な顔をする

「平次とおんなじこと訊くねえ・・・私の思春期は暗かったのさ〜」

12、15、18と・・・私の人生暗かった・・・しゃれにもならない。

(仕方ないか・・・あの生い立ちなんだ、愛情の感性が欠落していても・・・)

思春期の入り口でセクハラにあい、兄に無理やり愛情を押し付けられ・・・

「判りましたよ・・・・そちらで寝ます」

これは成長過程なのかも知れない・・・悠太は諦めた。かなり、誠次郎には甘い。言いなりである・・・

「腕枕してあげるから〜」

かなりウレシそうな誠次郎を見ると、何も言えない

「でも、夏はどうする・・・暑いぞ〜」

「夏は離れましょう」

「え〜」

 

 

(いつか慣れるのかなあ・・・・)

至近距離で熟睡する誠次郎を見つめつつ、悠太は考える・・・・

(一人で緊張して馬鹿みたいだし・・・)

しかし、そんな誠次郎だから好きなのかも知れない。

自分も幼い頃、悠太郎に抱きついて眠っていたことを思い出す。

歳は変わらないのに兄のような存在だった。

誰かが傍にいてくれるという安心感は安眠できる。特にあの頃は、危険と隣り合わせだったから・・・

そっと、誠次郎を抱きしめてみる・・・・

へらへらしている平素より、無防備な今が、限りなく真実に近いと思える・・・

安らかな寝顔・・・・・

(あ、なんか幸せだな・・・)

にんまりしてしまう

(つらい事をつらいと言い、悲しい事を悲しいと言えたら、どんなに楽になるかわからないのに・・・)

笑顔で隠す本音・・・かなり誠次郎は疲れているはず

(若旦那が安らげるなら、傍にいてあげよう)

少しばかり、不自由でも・・・・

 

 

かなり・・・不自由だったり・・・・・・

 

 

 

 

次の朝、とりあえず、手代になった悠太と、丁稚頭になった嘉助の引継ぎが始まった。

「悠太さん、やはりカッコいいな〜」

羨ましそうな嘉助

「なんか、変な感じだけどな・・・」

今日は二人、つきっきりで。誠次郎はのけ者だった・・・・

 

「悠太さん、寝るとき、若旦那の横で寝てるんでしょ・・・嫌じゃありませんか?」

え・・・・

「主人と一緒だなんて、緊張するじゃないですか?たまには羽目外したいですよね・・・」

どういう羽目?

「まあ・・・緊張はするけど・・・」

別の意味で。

「なんか、触られたりとかしないですよね〜まさか・・・」

ははははははは・・・・・・

悠太の笑いが引きつる。

「若旦那は、そういう人じゃないよ。」

「なんか、最初は皆、悠太さんが若旦那の色子だとか言ってましたよね」

言ってた・・・・

「若旦那って、女に興味ないみたいだし・・・実際、どうなんですか?」

「さあ、どうだろうね・・・じゃ、次」

と何気なく、引き継ぎに話を戻したりしてみるが・・・・・

店内でも怪しむ者は多い。

(私は陰間のなりそこないなんだから、私といる若旦那が怪しまれても仕方ないか・・・)

「悠太さんは・・・男、ありなんですか?」

へぇ・・・・・・・

ここぞとばかりに、芸能レポーター並みの突込みを入れてくる。

 「もし、若旦那に迫られたら受け入れちゃいますか?」

はああ・・・・

なんてこと聞くんだ・・・・

「それないよ。ありえない。若旦那は嘉助も知っているとおり、人との接触を極度に嫌う人だから・・・」

「でも、悠太さんにはベタベタしてるの知ってますよ〜」

「保護者として面倒見てくださってるのさ」

実際、どっちが保護者か判らないが・・・・

 

「嘉助〜〜〜〜」

後ろから威圧してくる誠次郎の声がした。

「おしゃべりしてないで、仕事覚えなさいよ〜〜〜〜」

笑顔だが・・怒っている。悠太にはわかる。

「すみません・・・」

悠太はため息をつく・・・・

知らん振りしつつ、も聞いていたのだ、二人の会話を・・・・・

「だ、大体わかるよね・・・あのお・・・」

「は、はい・・・」

凍りつく悠太と嘉助・・・・

無事に一日を終えることが出来るのか・・・・・

 後ろで誠次郎の目が光っていた・・・・・

 

思春期とは、好奇心の塊らしい

 

 

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