朝倉亮一(あさくらりょういち)はいつものように朝を迎えた。

しかし、普段とは違う、過度の疲労感をその身に感じたのは起き上がろうとした瞬間・・・・・・

身体が思うように動かない。

(俺も歳食ったな・・・)

おそらく、昨日の依頼をこなすために召還魔術を行った、それが原因と思われる。

彼は28歳で呪術を生業としている。幼い頃から霊感が強く、余計なものを見る、聞く、感じるの

三重苦を甘受しつつ、弱みを強みに変えるため、人外魔境に身を置いた。

持って生まれた明るい性格と、生まれ故郷の大阪訛りで、ダークな職業のイメージと馬鹿でかい体躯を

カバーしている。

彼自身、仕事は明るくこなすのがモットーだった。

そんな彼に災難が降りかかっていようとは、彼自身も思いもよらなかった。

「こらしょっと〜」

掛け声で何とか起き上がると、ベッドの隣になにやら気配がした。

「えっ?!何これ」

白い肌の、銀髪の髪の長い女が眠っていた。

この世のものとは思えないほど、滑らかで美しい肌・・・朝日に反射して輝く銀色の髪・・・・

しかも、肩は露出されており、胸の辺りからシーツに包まっているが、おそらくシーツの中は

全裸と思われる・・・

「誰?これ」

 フリーズしたまま、女を見つめていると、閉じていた瞳が開かれた。

硝子玉のような紅の瞳が亮一を見つめる。

どきっ・・・亮一は息を呑む。

「どなた・・・ですか?」

亮一の問いに美しい顔がゆがんだ。

「はぁ?」

「なんで、ここに・・・」

むっくりと起き上がると腕組みをして、胡坐をかく銀髪の麗人・・・

え?!亮一は目を見張る。しなやかな白い裸体が現れ、シーツは腰だけを覆う。

問題は現れた胸元である。

「男?!」

胸が無い・・・貧乳というレベルではなく、れっきとした男の胸板だった。

そして自然と、シーツに隠された下半身に目がいく・・・

(ちゅうことは、この下には俺と同じもんが存在するのか?)

 ばしっーいきなり亮一は頭を叩かれた。

「どこをガン見してんだよ!見てぇのか?見せてやろうか?」

美しい顔と声に不似合いな言葉遣いに呆然としていると、麗人は自らの下半身を覆っているシーツを取り去った。

「ぎゃぁ〜」

思わず叫んだ亮一は、もう一度頭を叩かれる・・・

「うるせぇ!騒ぐな。おんなじモノつけてんだろ!てめーも。つーか、昨夜さんざん見たろ?」

(昨夜?)

亮一は記憶の糸を辿る。昨日は結婚詐欺にあって被害を受けた女性の依頼で、相手の男を同じ目に合わせた。

絶世の美女を召還して、男から財産、地位、精気全てを奪い取り、被害金額は取り戻した。

絶世の美女・・・夢魔ともインキュバスとも呼ばれている悪魔・・・

相手の好みの異性の姿に身を変えて、誘惑する淫魔・・・ミッションは遂行した。

報酬も受け取った。全て終わった。

「なんで?」

こんな見覚えの無い男に二度も頭を叩かれるのだろう?それよりも、なぜこの男はベッドに全裸でいるのか?

しかも、昨夜さんざん見た・・・とは?謎が深まるばかりだ。

「お前が呼んどいて、なんで はないだろう?」

「呼んだ・・・とは、ほなデリヘル?」

アホ!と言いつつ男は亮一を足蹴にした。

「お前それでも呪術師か!悪魔をデリヘル扱いするとは・・・」

はぁあ?亮一は耳を疑った。

「悪魔やてぇ?」

「まあ、デリヘルとやることは似たようなもんかな〜俺、夢魔だし」

ゆがめた顔を妖艶に微笑ませて、夢魔は亮一を押し倒した。

「やることは大体一緒・・・」

首筋を這い回る舌に昨夜の記憶がよみがえる。

 

 

ー任務は完了したから帰ってええぞー

いつまでも居座っている夢魔に亮一は背を向ける。

ー報酬は無し?−

ー生贄持っていったやろう?−

ふふふふ・・・笑いと共に後ろから抱きしめられた。

ー夢魔の好物は、死んだ動物なんかじゃないよー

驚いて振り向いた亮一の目には、銀髪と紅色の瞳の麗人が、バスローブに身を包み佇んでいた。

ーまだ何か取る気ぃか?−

ー良い思いさせてあげるだけだよー

手を引かれて、気づけば寝室のベッドに腰掛けていた。

いつの間にか・・・まるでふわふわと夢の中にいるようだった。正常な判断さえ出来なくなっていた。

ーまて、お前、夢魔やろ?ちゅう事は・・・お前の望みはー

ーお前のスペルマ。あんな女たらしのよりも、霊力のあるお前のがずっといいー

はあぁ?

抵抗する暇も無く、いつの間にかジーンズのズボンのファスナーから取り出されたモノを夢魔は咥えていた。

ーおい!ー 

それからは脳が麻痺したように、抵抗する事も出来ず、かろうじてこらえていた精神力もいつしか尽き果て・・・

 

一晩中吸い取られていたような気がする・・・

「なにぃ?ほな、このだるさは」

「7回くらいイッたかな〜最初は我慢してて手強かったけど、1回イクともうイキっぱなしだったね」

はぁ〜まさか夢魔にやられるとは・・・亮一は唇を噛んで夢魔を我が身から引き離す。

「判った。判ったからもう帰れ」

「覚えてないの?お前は俺と契約を交わしたんだぜ?」

ケケケケ・・・・・・と笑う夢魔を目の前に、亮一は言葉を無くした。

 

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