終わりと始まり 3.
桜散る校庭で、智は悠利の姿を見つける。
卒業証書を手にクラスの友達と笑いあう悠利。
前は、悠利が卒業する事に動揺していたが、エンゲージ後は静かに受け止められる。
絆 ー そういえば総てカタがつく。 −繋がっている ー その実感は揺ぎない。
遠くから見るマスターは智にとって誇らしく、頼もしかった。
そして・・・・美しい・・・・
あ・・・・
悠利も智に気付く。
「ごめん後で・・・」
クラスメイトから離れて、智のほうに来る・・・散る桜の背景が彼をさらに美しくする。
「智、どうしてそんなところで見てるんだ?声かけてくれれば・・・」
「遠くで見ていたかったから」
智の言葉に少し照れながら、悠利は肩を組んで歩き出す。
「写真、出来てきた。帰りに寄って見てくれ。」
肖像画の構造を真似て撮った悠利と智の写真。
「どう?」
「並べて掛けると不思議な感じがする。」
確かに存在した2つの愛。それが並んでいる・・・時を越えて・・・・
「図書室に行きませんか?」
初めて出会った場所・・・笑って二人は歩き出す。
誰もいない図書室の戸を開け、本棚の前に立たずむと、あの時の場面が蘇る。
ー「ユリシーズ!」
「・・・・誰?どうして僕の名前を?」
「知り合いに・・・・似ていたんだ・・・君も・・ユリシーズというの?」
「ああ。僕はイギリス人の祖父を持つクォーターなんだ。日本名は竜崎悠利。
学校では悠利と呼ばれているから、英名で呼ばれて驚いたよ。」
「君の名は?」
「野中智・・・・」ー
「多分、僕はあの時すでに悠利に魅かれていたんだ・・・」
ユリシーズに似ていたからではない・・・今ならそれがわかる。
「僕も・・・」
家にある古い肖像画の少年、テリウスに似た智に、悠利も魅かれていた。
そっと、そっと歩み寄り、重なりあう唇・・・・・
遠回りをしながら、やっと一つになった実感が2人を包み込む。
遠回りしなければ成就しなかった愛・・・・
「おにいちゃ〜〜ん」
遠くで美奈が智を探していた・・・・
卒業式を終えて、竜崎家の車で悠利の家に着くと、リビングに案内された。
掛けられた肖像画と写真・・・・ユリシーズと智。 悠利と智・・・・・
「悠利はこれをどう思う?」
智は写真を指して訊く。
「デュークへの返答。じゃないのか?」
ううん・・・
智は首を振る
「これには2つの意味がある。もう一つ意味は・・・悠利、君への恋文」
終わり、そして始まり・・・・2つの意味を持つそれは未来へ続く絆の証。
「僕たちは、幸せになろう。何があっても。」
自分を犠牲にして智を送ったユリシーズの分まで・・・・
寄り添う2人を見つめて島崎は涙ぐむ
(若様、やっと、貴方の思いは叶いました・・・)
永い時の中でめぐり逢う奇跡、遂げられた想い。
竜の血の伝説は語り継がれる。
完
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