終わりと始まり 2.

 

 

 

その後、試験や、受験や様々なことで、智と悠利は会う事もままならないまま春を迎えた。

そして、悠利の大学進学も決まり、トップで有名大学に合格。智は久しぶりに彼の家を訪ねた・・・・

 

「合格おめでとう。でも・・・来年僕が悠利の大学に入るのは難しそうだな・・・」

リビングでお茶を飲みつつ智が愚痴る

「家庭教師しあげるから、頑張ってみたら?」

そうすれば、度々会えるが・・・・智は合格する自信が無い。

 

「あの絵・・・ここに掛けようと思うんだけど・・・」

と前の壁をさす悠利。ロレンス卿から贈られたユリシーズと智の絵の事である。

「智は・・・もう大丈夫かな?」

ああ・・・智は頷く。

「出来れば、あの絵と同じ構図で、写真を撮ってくれませんか?僕と」

ふうん・・・

悠利は考える。衣装はパーティで着たものがある。

「それを絵の隣に掛けて欲しいんです」

(智・・・・)

悠利は涙をこらえた。

それが、ユリシーズの智に当てた恋文の返答なのだ。

「判った」

 

「卒業祝いは何がいい?」

自分の家より遥かに金持ちな悠利に こんな事を聞くのも気が引けるが、智は何かお祝いしたかった。

「いいよ、そんなの」

智さえ傍にいてくれるなら、何もいらないと思った。

「じゃあ・・・ロレンス卿の結婚式に、僕と参席してくれる?ちょうど春休み中だから。」

「いいの?僕が行っても?」

「招待状が来てね・・・智の分もあるんだ」

 

 

報われる恋・・・

報われぬ恋・・・

 

様々な人生の中で人々は生きている・・・・

 

そっと智はイギリスに思いを馳せる

今度行く時は、また違った風景が見えるはず・・・・そう信じる。

終わらせるためでなく、前に進む為の渡英・・・

 

 

「じゃあ、結婚のお祝い考えないとね。」

はははは・・・悠利は笑う。

「結局、智はお祝いすることになるんだな。」

 

 今はとても満ち足りている。先のことは判らないが、ただ、今の幸せに身を委ねていよう

そっと智は微笑む。

 

「悠利に会えてよかった。」

初めて会った時のあの、図書室での出会いが蘇る。今ひとつの伝説が終わり 新しい伝説が幕を開ける。

 

「運命だったんだよ。これは」

竜の血に導かれた運命・・・

悠利は強い絆を感じていた

 

総てを受け入れる寛容さと、愛と勇気と、信念さえあれば、越えていける。

智の中の竜の血はそう告げていた。

 

 

 

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