誓い  3.

 

 久しぶりに帰宅した父の書斎で、悠利は留学を辞退する旨を告げる。

悠利と同じ、金髪碧眼の竜崎健人・・・

その父の面影を見るたび、悠利は、公爵を継ぎ父となったユリシーズは、こんな風だったかも知れないと思った・・・

「で、東京の大学を受けるつもりか?」

「はい」

健人は、悠利の人差し指にはめられたクロウリングに気付く。

「ドラゴンズ・ブラッドか?」

「はい、エンゲージしました。」

セレスティア公爵家の伝承・・・デューク・ユリシーズが未来へ送ったと言う竜の眷族・・・

彼と出会いエンゲージする事が、ユリシーズの転生と言われる竜崎悠利の使命だった。

「成し遂げたんだな・・・お前は」

「運命です。こうなるしかなかった。」

いいや・・・

健人は窓の外の月を仰ぐ。

最初の運命はデューク・ユリシーズと智だった・・・・しかし・・・それは成就しなかった・・・

今回も成就しなければ、そのまま次にまわされる事になる。

「ありがとう・・・」

父のその微笑みはまるで、デューク・ユリシーズが微笑んでいるように見えた・・・

いや・・・確かにデュークは悠利に告げたのだ ありがとうと・・・・父を通して・・・

 

「いつか、イギリスに行こう、智と共に。デューク・ユリシーズの墓参に・・・」

「はい」

おそらく智も行きたいだろう・・・ぼんやり悠利はそう考える。

「お前は変わった」

「そうですか?」

そう笑う悠利の笑顔が、儚い少年のそれではなく、男らしい強さを秘めていた。

満たされている。そう感じる。

 

 

「貴方を守ります」

 

竜王の公主への誓いは今もなお、受け継がれている。

自らを犠牲にして 愛するものを送った竜王の子孫の血は智の中に

竜王の意志を受け継いで その愛を全うした公主の血は悠利の中に

それぞれ受け継がれ、時を越えて再びめぐりあった。

 

「永い道のりでしたよ」

悠利はデューク・ユリシーズを思う・・・

守護を受ける主人の立場でありながら、自らの守護者を守ろうとしたデューク。

それは、戦いを終わらせて公主とその胎の子を守る為に死を選んだ竜王を救えなかった

マリナ公主の恨を解くための道程であった気がする・・・・

 

悠利は実感する。智とのエンゲージ以降、デュークは自分の中から姿を消した。

いや、一つになったとも言える・・・・

 

手探りのまま、智と悠利はここまで来た。

 

「これからの歴史は僕たちが作るもの・・・・」

未来へ繋げる竜の血・・・・それは能力(ちから)などではなく、竜王の、愛するものを守り抜いた強さと献身の精神。

それを忘れるまいと悠利は今一度、自らの中のデューク・ユリシーズに誓う・・・

 

 

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