誓い 2. 

               

                                                             数日後、美奈は帰宅後、部屋にこもって泣いていた・・・

「どうしたんだ?」

恐る恐る部屋のドアから覗く智に、彼女は泣きついてきた。

「失恋しちゃった〜〜」

ぎくっ・・

(僕のせいか?)

「知美が、竜崎先輩に思い切って告白したらね、恋人がいるって言うのよ!それも最近やっと

思いが叶ったとか何とか・・・・」

(やれやれ・・)

ため息をつきつつ、智は美奈を抱えて部屋に入る。

「最近、竜崎先輩、すっごく幸せそうなんだよ!ダレだろう?その相手って」

「さぁ・・・」

心の中で詫びる智・・・・

「一発バコン!とやらなきゃ気がすまない〜」

(・・・勘弁してくれ・・・)

「温室で、誰かと会ってたっていう目撃者もいるんだけど・・・」

「そんなとこで告白するかよ〜」

わざと話を逸らそうとした。

「なに言ってんのよ、知らないの?あそこのバラ園は告白スポットなの」

知らなかった・・・バラ園で待てと言った悠利。あの時彼は・・・

「秘密の話はバラの下でする・・・っていうじゃない?」

「アンダー・ザ・ローズ・・・てあれ?」

「相手の方はよく見えなかったらしいんだけど・・・ショートカットの女の子とか・・」

本当によく見えていなかったらしい。智は胸をなでおろす

「男だったりしてね〜バラ園だけあって薔薇だったとか・・・」

大笑いの美奈につられて笑ってはみたが、どうしても智の笑顔が引きつる。

「まあ、いいわ。泣いてすっきりしたから、次の恋でも探そう〜」

妹は案外逞しいのだ・・・

 

(恋人か・・・)

智は自らの左腕をまくって見る。傷痕はかなり薄くなり、凝視しなければ見つけられない。

終わったのだ。ユリシーズとの日々は。

忘れたわけではない。

身代わりなどではない。

 

「そういえば・・・お兄ちゃんも最近浮かれてない?怪しいなあ・・・」

美奈が智の顔を覗きこむ

「僕も、出来たんだ。恋人」

「誰?誰よ?」

「秘密」

身代わりなど存在しなかったのだ。誰一人。

智はテリウスの身代わりではなかったし、悠利はユリシーズの身代わりではなかった。

それが智の出した結論。

 

今は・・・・・

竜崎悠利という人が、自分の大半を占めている。

不足していたものが満たされた気分・・・離れていても一番近くにいる最愛の人。

 

これでよかったのだ・・・・・

 

 

そう思える。

 

 

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