再会 2.
「島崎・・・彼は帰ってきたよ」
夕食の席で悠利はふと、そうつぶやいた。
「悠利様・・・・」
「確かに・・・僕の体には、デュークが受けた智の血が流れている・・・これは宿命だ。
しかし、だからといって僕はデュークの代わりにはなれないんだよ」
(サトルと同じ葛藤を、悠利様は今抱えておられる・・・・)
島崎は悠利を見詰める・・・・
(私は・・・今度も、見守る以外、何も出来ないのだろうか・・・・)
前世でテリウスと智の生母、ルチアだった彼は、今は悠利の執事として彼を見守る立場にいる・・・
「智の血はデュークを通して、貴方に受け継がれた。それが智と貴方をつなぐ絆となる事は事実なのです・・・・」
越えなければならない壁はある・・・・・
それは、悠利と智2人にかかっている事・・・・・
「悠利様・・・デュークの意志として、智とエンゲージする事を望んでいるのですか?
それとも・・・貴方の意志で・・・」
使命や義務感なら、おそらく悠利がデュークの代わりになれない以上、無理だ・・・・・・
「判らない・・ただ・・・いくら・・義務だとしても・・・智が望まないなら、僕は彼とエンゲージしないだろう・・・・
今ならわかるよ・・智がデュークの元を去った時の気持ちが・・・」
自分より大切な人・・・・・
「デュークにとって彼がそうだったように、僕にとって彼はそうなんだ・・・そして・・・
僕がこんな立場にいるのはデュークの智への償いなのかも知れない・・・・・」
島崎は顔を背けて涙をぬぐう・・・・・
(ユリシーズ様・・・・ここで、もつれた糸を解かなければ、来世に持ち越します・・・
どうか貴方の転生である、悠利さまのために力を貸してください・・・・)
時とともに薄れ、力が弱まってきている竜の血・・・・
しかし・・・・未来へ繋げて行く使命が、彼らにはある・・・・・・
ユリシーズとのエンゲージが実現しなかった時、すでに智には、その使命が課せられていた・・・・・・
自動的に・・・・・・
「悠利様・・・・・智の心を癒せるのはやはり、貴方しかいないのだと思います・・・」
「そうかな・・・」
かえって、ユリシーズの面影をだぶらせて苦しめているようにしか見えない。
智を見ると胸が痛い・・・・
ユリシーズとの愛の顛末を知った今では。
知らずに智を見守っていた頃は、こんな切ない想いはなかったのに・・・・
食卓の燭台の灯りがゆれて悠利の白い顔に影を作る。
ある日、突然目の前に現れた智・・・・・・
(あの時感じた懐かしい感覚も、胸に広がった甘い感情も、総てはデュークのものなのか?
僕が、竜崎悠利が智に感じた想いではなかったのか・・・・)
食事の手が止まり、島崎は冷めた手付かずのスープを再度温めるために、スープの皿をさげた。
(僕は・・・デュークの代わりなのか・・・添い遂げられなかった智とエンゲージするための代役なのか・・・・)
それでも構わない・・・智と添い遂げられるなら・・・・
見栄もプライドも何も無い。
智の傍にいられるなら・・・・・・・
しかし・・・・・・・
それさえ叶わないなら・・・・・・
「どうすればいい?」
(見栄も外聞もなく・・・・ただ・・・智だけが欲しい・・・・)
血のせいなのか・・・・・
ユリシーズの思念か・・・・・・
それとも・・・・・
自らの想いか・・・・・
確かに、智がユリシーズのためにここを去るといった時の胸の痛みは、竜崎悠利自身のものだった・・・・・・
それだけは確かだった。
智が、あちらの世界を選んで去ろうとした時の感情と、再会したときの感情は確かに違うものになっていた・・・・・
今・・・悠利と智の間にユリシーズがいる・・・・・・
あちらで、ユリシーズと智の間にテリウスがいたように・・・・・・・
ヒトコト感想フォーム |
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。 |