再会

 

 

    「島崎・・・彼は帰ってきたよ」

夕食の席で悠利はふと、そうつぶやいた。

「悠利様・・・・」

「確かに・・・僕の体には、デュークが受けた智の血が流れている・・・これは宿命だ。

しかし、だからといって僕はデュークの代わりにはなれないんだよ」

(サトルと同じ葛藤を、悠利様は今抱えておられる・・・・)

島崎は悠利を見詰める・・・・

(私は・・・今度も、見守る以外、何も出来ないのだろうか・・・・)

前世でテリウスと智の生母、ルチアだった彼は、今は悠利の執事として彼を見守る立場にいる・・・

「智の血はデュークを通して、貴方に受け継がれた。それが智と貴方をつなぐ絆となる事は事実なのです・・・・」

越えなければならない壁はある・・・・・

それは、悠利と智2人にかかっている事・・・・・

「悠利様・・・デュークの意志として、智とエンゲージする事を望んでいるのですか?

それとも・・・貴方の意志で・・・」

使命や義務感なら、おそらく悠利がデュークの代わりになれない以上、無理だ・・・・・・

「判らない・・ただ・・・いくら・・義務だとしても・・・智が望まないなら、僕は彼とエンゲージしないだろう・・・・

今ならわかるよ・・智がデュークの元を去った時の気持ちが・・・」

自分より大切な人・・・・・

「デュークにとって彼がそうだったように、僕にとって彼はそうなんだ・・・そして・・・

僕がこんな立場にいるのはデュークの智への償いなのかも知れない・・・・・」

島崎は顔を背けて涙をぬぐう・・・・・

(ユリシーズ様・・・・ここで、もつれた糸を解かなければ、来世に持ち越します・・・

どうか貴方の転生である、悠利さまのために力を貸してください・・・・)

時とともに薄れ、力が弱まってきている竜の血・・・・

しかし・・・・未来へ繋げて行く使命が、彼らにはある・・・・・・

ユリシーズとのエンゲージが実現しなかった時、すでに智には、その使命が課せられていた・・・・・・

自動的に・・・・・・

「悠利様・・・・・智の心を癒せるのはやはり、貴方しかいないのだと思います・・・」

「そうかな・・・」

かえって、ユリシーズの面影をだぶらせて苦しめているようにしか見えない。

 

智を見ると胸が痛い・・・・

ユリシーズとの愛の顛末を知った今では。

 

知らずに智を見守っていた頃は、こんな切ない想いはなかったのに・・・・

 

食卓の燭台の灯りがゆれて悠利の白い顔に影を作る。

ある日、突然目の前に現れた智・・・・・・

(あの時感じた懐かしい感覚も、胸に広がった甘い感情も、総てはデュークのものなのか?

僕が、竜崎悠利が智に感じた想いではなかったのか・・・・)

食事の手が止まり、島崎は冷めた手付かずのスープを再度温めるために、スープの皿をさげた。

(僕は・・・デュークの代わりなのか・・・添い遂げられなかった智とエンゲージするための代役なのか・・・・)

それでも構わない・・・智と添い遂げられるなら・・・・

見栄もプライドも何も無い。

智の傍にいられるなら・・・・・・・

 

しかし・・・・・・・

 

それさえ叶わないなら・・・・・・

 

「どうすればいい?」

(見栄も外聞もなく・・・・ただ・・・智だけが欲しい・・・・)

 

血のせいなのか・・・・・

ユリシーズの思念か・・・・・・

 

それとも・・・・・

 

自らの想いか・・・・・

 

確かに、智がユリシーズのためにここを去るといった時の胸の痛みは、竜崎悠利自身のものだった・・・・・・

それだけは確かだった。

 

智が、あちらの世界を選んで去ろうとした時の感情と、再会したときの感情は確かに違うものになっていた・・・・・

今・・・悠利と智の間にユリシーズがいる・・・・・・

 

あちらで、ユリシーズと智の間にテリウスがいたように・・・・・・・

 

   

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