再会

 

  

期末考査の期間中で部活もなく、智は図書室で一人英語の教科書を広げていた

ユリシーズとの一件は、遠い昔のように思われる。実際は1週間しか経たないにも関わらず。

(ルチアが術を施したのだろうか・・・・・)

そんな気がする・・・・・・

 

あの時・・・・・・・

 

12時を少し過ぎると、約束通り、ルチアがやってきた。

部屋の壁につくられた異空間から、智はこの世界に帰ってきた。

「貴方の未来が、幸福である事を祈ります。」

母の最後の言葉だった・・・・・・・

ユリシーズは・・・・・・・・・

言葉は無かった。

必要ないのではなく、どんな言葉も、ただの気休めにしかならないとわかっているから・・・・

言葉よりも鮮烈な一瞥を残して、智の前からユリシーズは消えた。

もう会うことは無い・・・・・

 

 

制服の左腕をまくると、薄い切り傷が残っている。

このまま傷が残る事を望むが、おそらく消え去るだろう・・・・・

 

「智、それは、あの別れ際の傷跡か・・・」

振り向くと、悠利が横に立ちすくんでいた・・・・・・

「貴方は・・・・総てご存知なのですね・・・」

そっと、その傷跡に触れると悠利はその場でくず折れた・・・・・・

「サトル・・・・・」

その声は竜崎悠利のものではなく、忘れようとしても忘れられない

最愛のユリシーズの声音だった・・・・・・・

「悠利・・・・・・・」

 

 

気がつくと保健室のベッド・・・

「智・・・君がここに?」

「はい。驚きましたよ、突然倒れるんですから・・・」

竜の血・・・・・・

悠利は確信する・・・・自らのうちに、ユリシーズがあの時 智から受け取った竜の血が

流れている事を・・・・・・・・その血が騒ぐのだ・・・・・・・

「もう・・・あちらには行けません・・・」

「ああ・・・」

「貴方はユーリの転生だと言いましたね。そしたら、僕は貴方とエンゲージすべきなのでしょうね・・・・・」

「その話は、今するな・・・」

確かにデューク・ユリシーズが悠利に託した願いはそうだったろう・・・・・

今やっとその意味がわかった。

しかし・・・・・・・

最愛の人と別れて、傷心の智につけこむような事は出来ない。

今は何もいえない。

転生でも、姿かたちが似ていても・・・・・悠利はユリシーズではないのだ。

変わりに自分を愛せと、そんな事を智に言えようか。

 

 

しかし・・・・・

おそらく・・・・・

 

悠利は智を愛している・・・・・・・

 

 

テリウスに瓜二つだからといって、智はテリウスの代わりになれなかったように

ユリシーズに似ているからと、悠利はユリシーズの代わりにはなれない・・・・

そう割り切れる性格ではないのだ・・・・ユリシーズも・・・・智も・・・

 

「君がデュークを待ったように、僕も待つ・・・・・・・」

 智は息をのむ・・・・・・・

あの時の智の立場に悠利が立ち、ユリシーズの立場に智が立っていることに気付いた。

(ユーリ・・・・こうしてお互いの立場を変えながら、僕達は再会する運命だったのですか・・・・・・

貴方の選んだ道はこれなのですか・・・・・)

 

 再び運命は回り始める・・・・・・・・

 

TOP       NEXT  

 

inserted by FC2 system
ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト