離別 1.
久しぶりに訪れた竜崎悠利の家・・・・・・智は客間に通された。
彼にだけは報告して行こうと思った。たとえ記憶から消えてしまうとしても・・・・
「智!来てくれたんだね」
ドアを開くなり、嬉しそうな悠利の声が聞こえた。
「報告する事があって・・・・」
とたんに表情を硬くして、悠利はソファーに座った・・・・
「報告・・・・・」
「僕は、あちらの世界に行くよ」
「そう・・」
悠利の、無理に作った笑顔が青ざめていた。
「デュークとも・・・・話し合ったんだね?」
「拒まれても、僕は退かない」
唇が震える・・・・・言葉が出ない・・・・悠利はそっと瞳を閉じる・・・・
「どうしても、悠利にだけは言って行きたかったんだ。悠利は・・・・特別だから・・・・」
特別・・・
そんな言葉がなんの慰めになろうか
「ありがとう・・・・・元気で・・・・」
力なく放たれた別れの言葉に、智は心が痛んだ・・・・・・
(別れたくない・・・・・)
そんな想いがわいてくる・・・・・
自分にとって、悠利もまた大切な人だった・・・・・・
智のことは記憶から消えてしまうだろう・・・しかし、悠利の記憶は智の中から消えない・・・・
ユリシーズが悠利の代わりになるか・・・といえば・・・判らない・・・
何かを得る為には、何かを捨てなければならない。
智はユリシーズを選んだ・・・・・
寂しげな優しい瞳に見送られて、智は悠利の家を後にする・・・・・・
(拒まれても傍にいよう。)
それが智の出した決断。
ドラゴンズ・ブラッドとしてユリシーズに仕える事
それが智の選択・・・・・・
何よりも誰よりもユリシーズを守りたいと思う。
高貴で気高く強い・・・しかし儚くもろい・・・そんな大切な人を守る為に
総てを捨ててもいいとさえ思った。
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