放浪の魂          . 

 

 

 全校集会の後 教室に帰る途中で智は、ばったり悠利に会った。

「最近・・・来ないね」

行きづらかった・・・・・ユリシーズとあんな状態で、悠利に会うのが辛かった・・・・

促されて肩をならべて歩き出す智。

「辛いのは判るよ・・・何もしてあげられないのがもどかしい・・・・」

「いいんです・・・・待つと決めたんです」

「智。」

腕をつかまれた・・・・・・

「僕を見て、デューク・ユリシーズを思い出すか?」

だから、会うと辛いのだ・・・と智は思う

「ユリシーズも・・・こんな気持ちなんでしょうか・・・・」

俯く智の肩を抱いて、悠利はささやく。

「・・・・すまない・・・辛かったらおりていい・・・・」

「もう・・・遅い・・・・」

悠利を振り払って智は教室に向かう

 

(お前の気持ちが痛いほどわかる。僕は君を・・・。デューク、貴方は僕を通して彼に許しを請おうと

しているのですか?)

智の後姿を見詰めつつ、悠利はため息をつく。

(誰かの身代わりとは・・・・辛いことだ。しかし、身代わりにもなれず拒絶されるのは、なお辛い。

せめて僕をデュークと思い、慕ってくれたら・・・・・)

ふっー

悠利は笑う・・・・・・

自分達はそんな関係ではない。判っている・・・・・何故、そこまで気になるのかわからない。

デュークのテリウスへの恋慕が自らの細胞に刻み付けられているのか・・・・・・

それとも、智への想いか・・・・・・・・・

 

何にせよ、一目で魅かれたのは事実だった

 

(智も・・・・デュークに会った時、そんな感じだったのか?)

 

この世には好き、嫌い、愛している、関心ない、そんなYES・NOで割り切れるものばかりではない事を

痛感する・・・・・・・

 

明らかなのはデューク・ユリシーズにとって智は”大事な人”で、智にとっても彼は”大事な人”である事。

 

 

そして・・・・・・・

 

 

自らにとっても・・・・・・・・・・・

 

 

智は・・・・・・・・・・・・

 

 

”大事な人”なのだ・・・・・・・・・・・

 

愛だの恋だのと簡単に言い切ってしまえない、複雑な恋慕を抱えたまま、

悠利は、デューク・ユリシーズと智の関係を見守る事になる。

それが辛い作業であったとしても・・・・・

 

 

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