始まりは突然に  .

  

 

気が付けば川のほとり・・・・・

中世を舞台にした何かの映画で見たような風景が広がっていた・・・・

(ここは?)

智はあたりを見回す

(あの占い師のくれたお香のせいかも知れない・・・・胡散臭かったもんなあ)

 

「テリウス様〜」

遠くで声がする・・・・・・

蹄の音が近づき、とたんに馬に乗った数人の騎士に取り囲まれた。

「テリウス様、ご無事でしたか!さあ参りましょう」

(え???何処へ???)

あれよあれよといううちに 智は馬に乗せられ、騎士と相乗りで連れ去られた・・・・・

(え?!!!!〜〜〜〜〜)

何処かの軍の陣営の、とあるテントに連れてゆかれ、簡易ベッドに座らせられた。

外から声がする・・・・人がやってくるらしい・・・・

「団長、やっと弟君をお探しいたしました。」

「ご苦労だった。テリィが無事で何よりだ。もうだめかと思ったが・・・・」

誰かと間違えられて、ここに連れてこられたらしい事は判った・・・・・

 

金髪で蒼眼の背の高い青年が入ってきた。騎士服の麗しいその姿に智は見惚れた・・・・

「テリィ・・・本当にお前なんだな・・・・」

いきなり抱きしめられて訳のわからない智・・・・・・

「あの・・・僕は・・・テリィなんかじゃ・・・」

「団長・・・・どうも記憶を失っておられるようなのです・・・・」

「そうか・・・・・軍医殿を呼べ」

「はっ」

部下は出て行き、団長と二人きりの智・・・

「私の事も・・・・覚えてはいないのか?」

(そう言われても・・・・)

 

やがて、軍医が来て智のあちこちを診察しては出て行った・・・・・

軍医と外で話をしていた団長は、真剣な面持ちで入ってきた・・・・・

 

「テリィ・・・・」

ベッドで横たわる智の横に腰掛けて見下ろす・・・・・

堀の深い彫刻のような美しい顔が目の前にあった・・・・・

 

(え!?)

団長の行為に智は硬直した。

着ているシャツのボタンを外しにかかっているのだ・・・・・

(脱がして何する気だ〜〜〜!!)

ボタンを総て外すと、団長は智の右腕を持ち上げ脇の下・・・胸の横側に顔を近づけた。

そしてため息をつく・・・・・・・

「お前は・・・テリィではないな。彼には、うす桃色の花弁のような痣があったんだ・・・」

「ここにですか?」

と智は脇を指す

「よければ、事情を僕に話してくださいませんか?」

団長は頷いて語り始めた・・・・・・

 

「私はアルメニア王国の竜の騎士団の団長、ユリシーズ。弟が一人いて、テリウスという。

隣国ナローンとの戦の為ここに陣を張り、滞在していて一週間前に戦はわが軍の勝利にて

終わったのだが・・・・

弟が私を庇って敵の矢を受け、崖に落ちた。部下達が何日もかけてテリィを探していたところに

お前が現れたのだ・・・・人違いしてすまなかった。

本当にお前はテリィと瓜二つなのだ。次は、お前の話も聞かせてくれないか?

何故あそこにいたのだ?」

「判りません・・・・気が付けばあそこに。僕は多分・・・異世界の住人です・・・名前は野中智。」

「サトル・・・・・行く当てはあるのか?」

「ありません・・・」

「では、ここにいろ」

「いいのですか?」

「ただ・・・テリィの振りをしてくれないか?」

「出来るでしょうか・・・・」

「記憶喪失という事にして・・・・私と行動をともにしろ。総てフォローするから・・・・」

長い金髪を後ろで束ねたユリシーズの背中を見詰めつつ智はそうするしかない気がした・・・・

「はい・・・」

「では、私のことはユーリと呼べ。お前の歳は17歳。母親の名はルチア。

現父はセレスティア公爵・・・・」

「あの・・・質問ですが・・・」

ユリシーズが振返った。

「貴方と・・・そのテリィとは本当に兄弟なのですか?僕に似てるとなると、テリィは貴方とは

全然似ていないということになりますが・・・・」

髪の色からして違うではないか・・・・・・・それに顔立ちも西洋系と東洋系の両極端だ・・・

「テリィの母、ルチアは父の後妻で テリィは彼女の連れ子なのだ。だから正確には私達は

血は繋がっていない。」

(ややこしいなあ・・・・・・)

「その負い目からか、テリィは昔から私の為にだけ生き、私の犠牲になってきた。

今度のこともそうだが・・・・」

瞳を伏せるユリシーズに苦悩の影が覆う・・・

(彼は多分・・・・弟を愛していたのだろう・・・)

智はそう感じていた・・・・・・

 

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