襲名式 5

 

 

結婚式が済むと、引き続いて襲名式が行われた。

鬼頭の家宝の伝授と8代目の挨拶の口上。その後は会食に移る。

 

そして一通り、招待客に挨拶をすると、伊吹と龍之介は退席して控え室に向かう。

 

「緊張した・・・・寿命10年は縮まった」

「でも中々立派なモンでしたよ」

笑いつつ伊吹は控え室のドアを開ける。

「先が思いやられるよ」

ため息の龍之介の着替えを手伝う伊吹・・・・・

「なんやかんや言いつつ、クリアーできるんと違いますか?」

龍之介の脱いだ着物を伊吹はたたみ始める

「新婚旅行、気をつけて行ってきてください」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

無言の龍之介の圧力を背中に感じて、伊吹は振り帰る

「大丈夫・・・・ですよねえ・・・・」

ワイシャツのボタンをはめつつ、龍之介は伊吹を見詰める。

「お前こそ・・・・大丈夫か?」

はははは・・・・・笑いつ伊吹は立ち上がり龍之介のネクタイを結ぶ

「妬いて欲しいんですか?」

「おう。妬けよ」

至近距離の龍之介の顔・・・緊張はすっかりとけて幼い表情になっている・・・・・

慣れた手つきでネクタイを結び伊吹は顔を上げる

龍之介の襟を正したその腕で伊吹は、龍之介を引き寄せくちづけた

 

「伊吹・・・」

驚く龍之介に笑いかける伊吹・・・・

「妬いてみました。マーキングしたいとこですが、姐さんに失礼になりますから自粛しました」

「そうか・・・・・」

急にイタズラっぽい目をして、龍之介はいきなり伊吹のネクタイを緩め、シャツのボタンを外す

 「龍さん!!!!」

吸血鬼よろしく、首の付け根を襲われる伊吹・・・・

「変わりに俺がマーキングしてやった。浮気するなよ。」

 

 

はーーーーー

控え室の大鏡に自分の首筋を映して、ため息の伊吹・・・・・

(見つかったらどうするんだ・・・・特に、宮沢の兄さん。)

そんな伊吹の背後から、龍之介は抱きしめる

「揺るがない自信はある。だから、心配するな。嫉妬もするな」

「はい」

 微笑んで伊吹はそっと目を閉じる・・・・

(大きなイタズラ小僧だ・・・まるで・・・・・)

愛しい最愛の微少年・・・・・・

 

 

 

 

 

京都に旅立つ龍之介と聡子を見送って、伊吹は一息つく。

 

一旦終わった・・・・・・・

「お疲れやったなあ・・・藤島」

振り向くと島津がいた

「兄さんも・・・・」

 

「これからやで・・・・」

「はい」

首筋に手を当てつつ伊吹は苦笑する・・・・・

まだまだ龍之介のお茶目に翻弄される自分の至らなさを思いつつ・・・・・・

 この熱病は永遠に冷める事は無いだろうと諦めるのだった・・・・

 

 

 

 

後日・・・・・・・・

鬼頭組の事務室で、祝儀の控えとにらめっこの伊吹に宮沢が忍び寄って、手にあるモノを渡した。

「何ですか?」

リップステックのような、それのキャップを取ると肌色のステックが見えた

「肌色の口紅ですか?」

見上げる伊吹に、小声でこたえる宮沢・・・・

「口紅ちゃうよ・・・コンシーラ。しみ隠しや」

「私、しみなんかありませんけど」

「これで、赤いあざも隠れるぞ。」

と言いつつ自分の首筋を撫でる宮沢・・・・・

(知ってる!!!!)

凍りつく伊吹に、ささやきかける宮沢

「すまん、わざとと違うぞ。たまたま・・・あの日、手洗いに行く途中、控え室の前を通りかかってな・・・・・・聴こえるでもなく・・・

あ、もちろん、俺にしか聴こえてへんよ・・・」

(よりによって・・・・)

あの時感じた嫌な予感は的中した。

「兄さん、ホンマに消えるんですね。これで・・・」

引きつりつつ、コンシーラを握り締める伊吹。

「薄いあざも隠れるて、俺の奥さん言うてたから・・・試しに付けてみるか?」

「後で自分でしますから・・・・」

「そうか・・・・」

明らかにキャラクターが変わってしまった宮沢与一・・・・・・微少年ウィルスに感染。

クールキャラは何処へやら

迷惑ではあるが、龍之介風味のお茶目は憎めない・・・・・

 

明日の夕刻には龍之介は京都から帰る。

 

新組長を迎えての鬼頭組の日々が待っていた。

 

                          完  

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