終焉そして始まり 4

 

 

桜咲く、大学の卒業式・・・・・・・

珍しく 伊吹に哲三、島津、聡子を迎えてのにぎやかな卒業式だった。

「龍之介さんおめでとう」

花束を持って聡子は駆けつけた。

最後だけは逃すまいと、哲三も島津もわざわざ時間を作ってきた・・・・

もうこれで終わったのだ・・・と龍之介は、なんとなく思った。

そして・・・・・

新しく鬼頭での日々が待っていた・・・・

 

 

その後、島津の家で祝いの宴会が始まる。

井上や、大阪から宮沢、南原、岩崎が来ていた。

「ぼん!待ってましたよ。卒業おめでとうございます」

宮沢たちに迎えられ、大きなテーブルを皆で囲む

「ケーキカットしましょうか・・・」

由布子夫人がケーキを運んでくる・・・・・・・

「よっしゃ〜若ぼん、カットしいや!」

「大げさな・・・・」

戸惑いつつナイフを入れる龍之介・・・・・・・

鬼頭という組織に入ると言うことが、いやおう無しに自覚させられる

料理とともに、洋酒も運ばれ宴会に突入する

宴会も前よりは慣れてきた。雰囲気に合わせれば何とかしのげる。

何より伊吹がいてくれる心強さがある・・・・・・・

 

「後は式か・・・・」

哲三は嬉しそうに言う・・・・

「伊吹。今までようやってくれた・・・・龍之介がこんなに立派になったのも、お前のおかげじゃ」

泣き出す哲三を島津はなだめる・・・・・

「ぼん・・・・もう酔わはったんですか」

張り詰めた糸が切れたように、最近弱くなって来ている哲三・・・・・・

「しかし、ホンマにぼん・・・見違えるなあ。何時の間にこんなに大きゅうならはったんですか」

井上が驚いて言う

「昔の面影ないよなあ・・・・」

南原も笑いつつ言う・・・・・

「そうか・・・・」

毎日見ている伊吹はよくわからない・・・・

と言うか・・・・中身は変わらず甘えたの”ぼん”のままだと思っている

「親許離れての4年間で、しっかりしてきはったんやなあ・・・・」

何にも知らない井上はそういって頷く

確かに・・・4年間色々あった・・・・・・

龍之介にとっては19歳の頃が一番懐かしい・・・・

「それにしても、伊吹はぜんぜん変わらないなあ」

ちびりちびり洋酒を飲む伊吹を見詰めつつしみじみという・・・・・

「少しは老けたでしょう・・・・」

笑いつつ言う伊吹に、南原はすぐさま即答する

「ぜんぜん老けませんよ・・・兄さん」

 

変わらない・・・・・と龍之介は思う・・・・・

少しも・・・昔と変わらない。伊吹は永遠にそのままの伊吹なのだ

 

では・・・・自分は?・・・・・・・

伊吹は蛹から蝶になったと言う・・・・・・外面も内面も変わった・・・・・・・

しかし、そのときそのときで美しいと伊吹は言う。変わってゆく自分を変わらず愛し続ける伊吹・・・・・

その存在だけで幸せだった・・・・

 

緊張がほぐれ龍之介はいつしか伊吹の肩にもたれて眠り出す・・・・・

 

 

「ぼん・・・・」

 

井上がつぶやく・・・・・・

 

「寝顔は少年やねえ・・・・」

「そう、微妙に少年な・・・微少年」

伊吹の造語だった・・・・・

「美少年やなくて・・・微少年なんですか」

聡子も深く感心している・・・・・

「藤島・・・・若ぼん、部屋に連れて行って寝かせや・・・・」

島津が奥の部屋を指す。

「はい」

龍之介を抱えると伊吹は部屋に向かう

 

自分だけの微少年・・・・・・・

微笑みつつ伊吹はベットに龍之介を寝かす

「ずっと・・・・傍にいますよ・・・」

寝顔にそう告げて伊吹は部屋を出る・・・・・・・・・

 

伊吹にとっても龍之介は昔と少しも変わらない微少年なのだ・・・・・    

 

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