終焉そして始まり 3

 

 

鬼頭商事東京支店で、デスクの整理をしている伊吹に 井上がコーヒーを運んでくる。

「せっかく支店長が出来たと思うたら・・・・また空席ですか」

「安田女史がいるから大丈夫。」

「でも・・・・寂しいですねえ・・・」

金居嬢も寂しげにつぶやく・・・・・

「まあ、しゃあないなあ・・・兄さんは、ぼんが8代目継いだら側近になるからなあ。こんなトコにいてられへんわ」

「そうかあ・・・藤島さん、やくざになるのか」

頷きつつ納得する金居嬢・・・何処かずれている・・・・・

「いや、私は、もともとやくざですけど・・・・」

「え〜〜!!!」

・・・・何を驚いている・・・・・・・・・

「金居ちゃん、この業界では鬼頭の藤島いうたら有名なコワモテやで・・・・」

井上の言葉に更に驚く金居嬢・・・・・・・

「え〜〜〜!!!!そう見えませんけど・・・・・」

(・・・・どう見えていたんですか?金居さん・・・・)

横目で突っ込むい伊吹・・・・・・・

「そしたら・・・・南原の兄さんが次期若頭。まあ・・適任やなあ」

「7代目は会長として残らはる・・・・・」

「ぼんも、最初の頃は極道無理っぽかったですけど、今じゃあ立派にならはったし・・・・前途揚々ですね。

兄さんもようあそこまでへタレなぼんを男に育て上げはったねえ・・・感心しますわ」

確かに、昔の龍之介は見る影も無い。うわべは・・・・・・

「もともとの素質やろ。虎の子は虎。獅子の子は獅子・・・・」

「でもなんか・・・きっかけ、あったんでしょ?変化するきっかけ」

(無い事は・・・・・無いけど・・・・)

「時が満ちれば実は熟すもんなんや・・・・」

へ〜〜〜〜

変に納得する井上・・・・・・・・

深い事情は知る由も無い・・・・・・

 

 

 

「今日で仕事納めだろ?」

食卓につきつつ龍之介は言う

「はい。少し早めに上がりました。引越しもせなあかんし・・・」

とカレーの皿を差し出す伊吹・・・・

「式までは通いでええと言われてますけど・・・」

結婚式までは伊吹との同居を許されていた・・・・・・

「といっても1ヶ月少しか・・・・・」

「それとも離れ離れの予行演習したほうがええですか・・・・」

した方がいいのは百も承知だが・・・・・・・

「する気にならない・・・予行演習・・・・」

龍之介を案じての哲三の配慮だが、それでいいのかどうか伊吹は迷う

「覚悟は出来てますか?」

「心では出来てるが、カラダはどうか判らん」

「また・・・そういうことを・・・」

ため息な伊吹・・・・・・

「心で繋がってます〜とか言っても、結局は・・・なあ・・そうだろ?」

「私に同意を求められても・・・・・」

困り果てる伊吹・・・・・・・

「よくも俺達 昔、うだうだやってたよなあ・・・」

そういう時代もあった・・・・今では懐かしい・・・・・

「つーか・・・・あれは伊吹の鉄の貞操観念のせいか」

「それだけ覚悟して結んだ情やから、ここまで来れたんでしょう?」

(そういうもんか・・・)

確かに・・・・・かなりの覚悟はした。それでもいろいろ試練はあった。揺れ動いたりもした・・・・・

しかし

やはり、今も龍之介の傍には、変わらず伊吹がいる

あの頃が懐かしい。でも・・・でも今が大事。そして未来が・・・・・

「これからも・・・離れずついて来いよ」

未来に続く今・・・・・・今を精一杯生きることに集中しよう・・・・・伊吹の傍で。

「はい」

行くところなど他にはない。龍之介の傍で死ぬ事しか考えてはいない・・・・・・・だから・・・・

と伊吹は願う・・・・・・

最期の一瞬まで龍之介の傍にいる事を・・・・・・・・

 

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