結納前後 4

 

 

次の朝、鬼頭の台所で遅い朝食を取る龍之介と伊吹。

周りは年末年始の疲れで自室にこもっている。

通いのメンバーも今日は自宅休養だ・・・・

 

「やばかった・・・・うっかり寝た・・・」

朝、目覚めた時、目の前に伊吹の寝顔が見え時は冷や汗モノだった龍之介・・・・・

「お前も、疲れて寝たんだな・・・」

仕出屋の御節の残りをつつく龍之介・・・・・・

「すみません・・・」

と湯のみに茶を注ぐ伊吹・・・・・

「でも、別に・・・びくつくことないよな。話をしている途中にうたたねして朝まで・・・やましい事ないじゃん」

「確かに、やましい事は・・・してませんし」

「だろ?」

食欲もなく、緑茶をすする伊吹・・・・かなり過労状態だ・・・・

「ただ、あの光景・・・ 見れれたら誤解の一つくらいは、されるかも・・・・」

(うっ・・・・・)

言葉をなくす龍之介・・・・

 

「見つからなかったんだから、いいじゃないか!」

最後の結論・・・・・・・・

「何が見つからなかったんですか?なんか、隠れてコソコソいちゃついとったんですか?」

(ぎくっ!)

背後から島津の声がした・・・・・

(何時からいたんだろう?)

顔を見合わせる2人・・・・・・

 

「兄さん、お泊りでしたか?」

ひきつった笑顔で伊吹は振り向く・・・

「結納まではおるよ。仲人やし・・・・」

と、食卓に着く島津に伊吹はすばやく、茶を入れて差し出す

「若ぼん、結婚指輪のカタログ贈るんで選んでや」

「信さん、コレと同じもの1つ準備してくれればいいですから」

龍之介は自分の薬指から指輪を抜き取り差し出した。

「これは・・・藤島とのペアリング・・・・」

「聡子が3人そろいの結婚指輪にすると・・・そう言ったんです」

ふうん・・・・・

頷く島津・・・・・

「考えたなあ、嬢さん・・・」

いきなり龍之介は伊吹の左手を掴む

「だから、お前はこの結婚指輪、外すな。」

「はい。」

静かに微笑んで伊吹は頷く・・・・

「若ぼん、式は和装で、大きな旅館の大広間借ります。結婚式の後すぐ襲名式します。ええですな・・」

「襲名、そんなに急がなくてもいいのに・・・・」

「長い事 姐が居らんかった事がぼんの負い目や。そやから、はよう組に若姐さん置きたいんや。

まあ、結納済んだら式までは一休みしてええよ」

「信さんも忙しいね」

ははははは・・・・破顔う島津・・・・・

「7代目、8代目2世代に渡って結婚の世話するんやな・・・ワシ・・・」

「9代目までどうですか?」

笑いつつ伊吹が突っ込む・・・

「次は藤島伊吹が面倒見ぃや。9代目10代目と・・・・」

「無理ですよ・・・」

「でもないよ。さあ、もう一眠りするわ。用足しに出てきたらお前らがおったさかい来たんや・・・

お前らも休め。ちゅうか、いちゃつくのは今のうちやぞ・・・・」

「兄さん!」

去って行く島津の後姿に伊吹は叫ぶ

 

「とにかく・・・休もう。伊吹も疲れてるみたいだし」

龍之介の言葉に頷くと、伊吹は立ち上がり部屋に向かって歩き出す・・・・・

「龍さんもゆっくり休んで・・・・?!」

いつの間にか、伊吹より先に伊吹の部屋にたどり着いて、ドアを開けている龍之介がいた・・・・・

 

「龍さん・・・・」

さっさとベッドに横になっている龍之介・・・・・・・

「チョット狭いけど、我慢して寝ような。」

「ええんですか・・・・・」

「やましい事しなきゃあ・・・大丈夫だろ」

はあ・・・・・

伊吹も横になる。と、とたんにのしかかる龍之介・・・・

「癖になってますよ・・・・それ」

「ここが一番落ち着く・・・」

傍にいてやると安心して、すぐ寝付いた幼い頃の龍之介の面影がだぶる・・・・

「ぼん・・・」

昔、こうして眠っていたのだ・・・2人で・・・・

 

 

「何考えてんだ?」

突然龍之介が顔を上げる・・・・

「昔のことを・・・・」

「昔の俺と今の俺とどっちがいい?」

「同じです」

「同じじゃあないだろ〜」

ふふふ・・・・

伊吹は笑う

「私には同じ龍さんです」

「じゃなくて、色気があるのはどっちだ?」

おかしな方に話が向かい始めて、唖然の伊吹・・・・

「どっちもですよ。あえて言えば・・・・昔みたいにおねだりしてくれたらええんですが・・」

肩を震わせて笑いつつ言う伊吹・・・・

「するかよ!そんなの!」

赤くなってそっぽを向く龍之介が可愛くて、もっとからかいたくなる・・・・

「ゆうてくださいよ〜ちゅーしてって・・・ねえ・・・してあげますから〜」

「言わなきゃ・・・しないのか?お前は・・・」

ははははは・・・・・

大爆笑の伊吹・・・・・

「いいえ・・・してあげますよ」

龍之介を抱き上げて額にくちづける

「久しぶりですね・・・おでこにちゅー」

「・・・・・・・・・・お前・・・・・・」

何時になく子供扱いされて不快な龍之介・・・・

しかし、反面、額のキスでドキドキしていた十代の自分を思い出す・・・・・

伊吹は変わらず優しい・・・

龍之介は微笑んで伊吹の額にくちづける・・・・・・・

「おやすみ・・・・」

 

 

時が経っても変わらない想いがそこにあった・・・・・・・・

 

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