結納前後 2

 

 

今年の正月は龍之介の結婚を控えて、挨拶客も多かった・・・

3日間は許嫁の聡子も鬼頭に出向いていた

 

「聡子、気晴らしに出かけよう」

3日目の夕刻、ひと段落ついた頃、龍之介は聡子を連れ出した。

 

「お疲れ。少し一息つけ」

「慣れてます・・・気ぃ使わんといてください」

笑顔を絶やさない聡子・・・・・

「じゃあ、俺の方が疲れてんのかな」

龍之介を見上げる聡子。確かになれない事で疲れて見える

「どうする?茶でも飲んで行くか?このまま町内一周というのもなんだし・・・・」

「はい。お茶しましょう。何かお話あるんでしょう?」

静かなコーヒーショップを探して入る2人

滅多にない伊吹抜きの逢瀬である・・・・・

 

 

「結納前にして緊張する?」

「いいえ、それは形式だけのもの。大事なんはこれからの結婚生活でしょう?」

「聡子は俺よりしっかりしてるなあ・・・・」

総ての面で負けている気がする龍之介

「本当はそんなん、なくてもええと思いますけど。婚約指輪とか、結婚指輪も私は・・別に・・・」

「婚約指輪は精一杯させてもらうよ。で・・・結婚指輪なんだけど・・・・」

言いにくそうな龍之介に聡子は笑いかけつつ口を開く

「婚約指輪だけで充分です。」

先を越されて言葉の出ない龍之介の左手を取り、薬指のリングに触れる・・・・・

「これ、はずさんといてください。たとえ一瞬でも」

「知ってたのか・・・・・」

笑って頷く聡子が愛しい

「でも、指輪の交換の時ないと困るし」

「そしたら、それと同じもの1つ用意して私にはめてください」

(え)

「3人おそろいと言うのは、どうです?式の後はずっと婚約指輪はめますから。

嫌ですか?私がお2人に割り込むのは?」

一番の大儀名文かもしれない。聡子の最大の配慮だった。

それなら龍之介もこのまま左手のリングを堂々としていられる・・・・・・

「聡子・・・・いいのか?」

「はい。あ、でも指輪交換の前に一瞬外さなあかんねえ・・・・」

ふふふふふ・・・・・・

笑う聡子の手を取り、龍之介は彼女を見詰める。

「ありがとう。聡子の事、一生大事にするよ。」

「信じてます」

伊吹とは別の愛情を感じる。

それが何か追求はしない、伊吹と聡子・・どちらをより愛しているか。

そんな事も考える事すら無駄なのだ。どちらも大事・・・・・・

(ただ、言えるのは、伊吹は龍之介の一部と言う事。それが判ったから、もう揺るがない)

 

結納は7日に控えていた・・・・・・・・

 

 

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