許嫁 5 

  

 

「龍さん、ええですか。今回の冬休みは、結納まで一気にいきますさかい、心してください」

ノートブックを龍之介の部屋に持ち込み、伊吹は事務処理をしつつ言う。

「ああ。で、なあ・・・寝室まで来て仕事するか?」

机に向かう伊吹の隣に椅子を持ち込んで、覗き込む龍之介

「すみません。混んでるんで・・・でも、私の部屋ですると怒らはるし。」

「怒るよ、そりゃあ。明日からまた別室つー時に別室はいかん。」

「はよ終わらせますから」

「遅れたら遅れた分、お前に無理が来るんだぞ」

(・・・・なんか・・怖いんですけど・・・・)

冷や汗の伊吹の後ろから龍之介はささやく。

「徹夜はしたくないよなあ」

「いいえ、覚悟の上です。朝までお付き合いします・・・・」

意外な伊吹の言葉に目が点になる龍之介

何時からこんなに従順になったのか?

「どうかしたのか?」

額に手を当てて見る・・・・・・

「残り少ない時間、思う存分満喫してください」

ふう・・・・・・

そう・・・残り少ない時間・・・・・・

「結婚したら・・・・月に何回くらい逢える?」

「会うのは毎日鬼頭組で・・・」

「そう言う意味じゃなくて・・・」

「新婚の間は自粛せんとあかんのとちがいますか?」

(だろうなあ・・・・・)

ふううううう〜

長いため息の龍之介・・・・・

「龍さんも、あっちもこっちも相手にしたら身ぃ持ちませんよ。」

「妬いてるだろ・・・・」

伊吹の横顔を覗き込みつつ、冷やかす龍之介

「妬いてます」

すんなり敗北を認める伊吹。

「なあ、義務で結ぶ関係は不毛だろう?相手に失礼だろ?」

いきなり真面目な龍之介の声に、伊吹の手が止まる。

「どうしたらいい?」

作業を中断して、ノートブックを閉じる伊吹・・・・

「私に訊かれても・・・・」

聡子のことを思えば、愛する努力をしろと言いたいが、自己中心的な思いを消せない伊吹は寂しげに笑う

「すまん・・・・惨いこと訊いたな」

「姐さんを傷つけるようなことは、せんといてください。さばけてても女ですから」

立ち上がって龍之介は伊吹を抱きしめる・・・・・

「俺を抱けるのはお前だけだ。それだけは忘れるな・・・」

「はい。」

「結婚する事、後悔はしたくない。仕方なくするんじゃない。聡子は、おふくろみたいに慕ってる。

それでいいんだろ?」

それが鬼頭の8代目の行く道・・・・・

「強うならはりましたねえ・・・」

伊吹は龍之介を見上げる

「お前のお蔭だ。お前さえいてくれれば、何処までも強くなれる。」

「私の前でチョットくらい弱音吐くほうが可愛いですけど」

伊吹は立ち上がると龍之介を抱える

「さすがにキツイですねえ・・・」

「無理するな。腰にくるぞ・・・つーか・・・・恥ずかしいし・・」

俯く龍之介が可愛すぎて、軟化する伊吹

「じゃあ、ぼん。可愛い〜可愛い〜してあげますよ〜」

「恥ずかしいってんだろ!」

ジタバタする龍之介をベッドに運び寝かせたとたん、伊吹は組み伏せられる。

「力は俺の方が強いんだぞ・・・・」

華奢な昔から龍之介はバカ力だった・・・・・

ふっー

余裕の笑みを浮かべつつ、伊吹は龍之介を見据える

「いいですよ。何処からでもどうぞ・・・」

「!!なんだ!!その余裕は〜!!!」

 

宮沢が笑い死ぬだけのことはありそうな龍之介、伊吹カップルだった・・・・・・

 

 

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