許嫁 3
いつものように、島津のところから帰ってきた日曜の夜。
風呂から上がって、ダイニングのテーブルに置かれたケーキの箱に目を留める龍之介。
聡子からのバースディプレゼントである。手作りらしい。
「お茶、入りましたよ。」
伊吹に呼ばれて椅子に腰掛ける
「明日、やはり、水族館ですか?」
龍之介の誕生日は明日。
聡子は明日はどうしても仕事が入って会えないからと1日早くプレゼントを渡したのだ・・・・
が・・・・・
伊吹は知っている・・・・・
仕事は2人の邪魔をしない為の口実である事を・・・・
「何処も行きたくないな・・・ずっと部屋にこもらないか?」
時間がもったいない。たった2人だけの時間を一秒も無駄にしたくない・・・・
「引きこもりは、不健全ですよ」
からかい半分に伊吹は笑って言う・・・・・
「組を継いでも伊吹と何処にでも行けるが、2人だけでこもるのは難しくなるじゃないか。」
その気持ちは伊吹も判る・・・・・
「そうですねえ。まったリしますか」
「やっていけるかな・・・これから・・・」
先々不安な龍之介・・・・・
「大丈夫ですよ、8代目修行も順調やし、アルコールはほぼマスターしてるし・・・」
新年の宴会に向けて1、年がかりで酒の訓練もしていた。
「ぜんぜん美味くないぞ。なにがよくて飲むんだ?酒って・・・・」
甘党な龍之介は酒類は口に合わないらしい
「雰囲気ですよ・・・雰囲気で飲むんです。でも、結構強そうで安心しました。酒癖悪かったらどうしょうかと思いました」
ふうーーー
ため息とともに紅茶を飲む龍之介・・・・・
「それはそうと、伊吹、変わったな・・・」
「何がですか?」
「聡子に対しての総てが自然体になった気がする。」
ああー
多分あの時から・・・・・・
「なにかあったのか?」
「いいえ・・・」
「つまらんなあ・・・」
は?
龍之介を見上げる伊吹・・・・
「嫉妬に狂うお前、見るのが楽しみだったのに・・・・」
「龍さん!」
眉間にしわがよる鬼頭の若頭・・・・・
「平常心でない藤島伊吹も魅力的だったぞ」
天然から魔性に転向しつつある龍之介・・・・・何処かSっぽい。
ふっー
不適な笑みを浮かべつつ紅茶を飲む伊吹・・・・
「龍さん、遠まわしに言わはらんでもええですよ。どうして欲しいかはっきり言って下されば、して差し上げますから・・・・」
げ〜〜〜〜〜
完全敗北の龍之介・・・・・微少年に翻弄されていたあの伊吹は何処へやら・・・・・
これが3年の月日なのか・・・・
(にしても最近のこの余裕は何処から来ているのか・・・・)
「伊吹・・・キャラクター変わってきてないか?」
「龍さんこそ、昔みたいに”ちゅーして〜”とかおねだりしないんですか?」
「伊吹!!!」
3年間・・・誰よりも接近して暮らしてきた月日・・・・・・
誰よりも相手を知り尽くしたと思える歳月に、気楽さと安堵感を覚える・・・・・
聡子という一つの峠を何とか越えて。
「よし!決めた。明日は伊吹は1日メイドになれ。ご主人様にご奉仕するのがバースディプレゼントだ!」
・・・・・・・・・・・・・・・無反応な伊吹・・・・・・
「メイドとは・・・・下僕・・・立場は今とあまり変わりませんが・・・」
「違う!メイド服を着て、ねこ耳つけて”ご主人様〜お帰りなさい〜にゃお〜ん”と言うのだ!」
「・・・・・そいいうシュミがあったんですか・・・・」
「面白いだろ?」
「私がそういうコスプレして、似合うとでも思ってはるんですか?」
「似合わないから面白いんだろう?して欲しい事言えばしてくれるんだろ?」
龍之介の逆襲・・・・・・・・・
「・・・・判りました。龍さんのお望みとあれば、この藤島伊吹!メイドでもバニーガールでも何でも致します!!!」
へ・・・・・・・・・・・・マジ?????
今度は龍之介が目が点になる・・・・
早速、井上に電話し始めた・・・・
「井上、至急メイド服調達してくれ・・・・サイズは186センチの・・・」
「いいって・・・冗談だから、やめろ!伊吹!!!」
電話を取り上げる龍之介・・・・・
歳の差10歳・・・・・
伊吹には敵わない龍之介である・・・・・・・・・
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