縁談 6
龍之介と伊吹が帰った後、島津が聡子を振返る。
「嬢さん。ええんですか?ホンマに・・・」
「龍之介さん、立派になられましたねえ」
ああ・・・・・
「何年か前までは、甘えたのあかんたれで、組み継がす事も半分諦めておりました。若ぼんをあここまでにしたのは
藤島です。17や8のガキの頃から、若ぼん育ててきた・・・嬢さん、若ぼんから藤島を取り上げんといてください。
何があっても・・・・・それが、鬼頭の姐さんの遺言でもあるんです」
屋敷に戻ると2人は再びソファーに座る
「鬼頭の叔母様は、すでに見抜いておいででしたのね」
「はい。7代目も、いきなりしっかりした若ぼんを見て、認めるしかのうなりまして・・・まあ、あの2人も散々うだうだして
挙句の果てにああなったんですわ。ほとんど命がけの決意で。横から見てて痛いくらいでした。」
聡子は頷く・・・・
「判ります。見ただけで充分に・・・そんな真実の愛を、傍で見守りたいて思うんです・・・」
はははは・・・・・
「変わった嬢さんやなあ・・・・」
「鬼頭の雰囲気も好きなんですよ。島津さんを始めとして個性的ですもの」
ぶぁはははは・・・・
島津は大笑いする・・・・
「確かに個性派の坩堝や・・・・嬢さんもそういう面では個性派ですけどなあ・・・・」
顔を見合わせて笑う2人・・・・・
「かなりの確立で、若ぼんは嬢さんと結婚するでしょう。でも、嬢さんはそれでええんですか?」
「ええ。」
しっかりとした笑顔で聡子は答える。
「私ほんとに好きなんです。龍之介さんも伊吹さんも・・・2人が一緒でないと嫌なんです・・・・」
「もし、若ぼんが伊吹のとこに入り浸っても・・・構わんのですか?」
「邪魔するつもりはありません。それでも龍之介さんが私を姐と認めてくれるなら・・・ないがしろにはしないでしょう?」
そうだろう・・・龍之介の性格からして入り浸りは無理だ。
もし、そうなっても伊吹がそんな龍之介をほうってはおかないだろう
「嬢さんも・・・人見る目は確かやねえ」
優しい笑顔で島津は笑いかける・・・
「島津のおじさまも・・・・」
「もし、この縁談決まったら、ワシが嬢さんのこと守らせてもらいます」
聡子を見ていると、結婚まえの紗枝を見ているようだった・・・・
あの時も、彼は紗枝にそう言った・・・・あの時の紗枝が傍にいるような錯覚を起こす
静かな・・・しかし、強い美しさでしっかりと、そこに存在していた紗枝を思い出す。
「和服はすでに着こなしてはるさかい問題ないし・・・」
彼女は母の実家の呉服屋を手伝っていた。
和服に対するセンスのよさは業界一で和装コーディネィターとして、写真集撮影や時代劇の撮影には時々呼ばれていた。
仕事には困らない為、結婚が遅れたのは事実だが、過去に婚約中に破談になった事も影響している。
島津が伊吹のことを話すと、聡子も自分の過去を話し出した・・・・・
最愛の人と5年間交際して、婚約したのもつかの間、調べれば何人もの女性と同時進行で交際していたと言うのだ
そのくらい我慢しろ・・・と周りは言ったが、彼女は破談にした・・・・・
それを聞いて島津は断るのかと思いきや、見合いを受けるというのだから驚いた。
今日の彼女を見て、島津はなんとなく聡子の事がわかってきた・・・・そんな気がした・・・・
「龍之介さんと伊吹さんの中に見たいんです・・・・永遠に変わらない愛を。命がけの真実の愛を・・・・」
ベクトルの違う情熱・・・・
しかし、島津はそんな彼女が限りなく愛しかった・・・・・
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