縁談 1

 

 

龍之介の、時期はずれな成長期事件以後は何事もなく、1年2年と過ぎていった。

勢力を弱めつつも ベタベタな同居生活を送る龍之介に忍び寄る新たな試練の訪れは、

大学の4年の秋から始まった。

 

 

「見合い相手・・・・ですか?」

昼間、島津の所に呼び出された伊吹は、哲三から龍之介の見合い相手を探すという話を持ち出された。

「卒業と同時に婚約。1年後に結婚。結婚後8代目襲名と行きたいんやけど・・・・」

当然、来るべきものが来たという感じだった。

「心配なんは・・・・それまでの期間で、あいつが組長として立つ度量を身につけられるか。

また、頭ではわかってるけど実際、結婚を受け入れられるのか。その辺はお前に頼むしかないんや。

お前も気乗りせんかもしれんが一つ頼むわ」

自分の事より龍之介のことを考えると、胸が痛い伊吹だった

「候補はワシらが探す。同じ組関係から探すのが一番ええ。」

島津もいつもの笑顔はなく、何時になく深刻である

「もしかして、私のことが・・ひっかかるんですか?」

結婚する前から夫に愛人がいて・・・・しかもそれは・・・男・・・

「いや、問題ないよ。組長のイロの数は甲斐性や、何処でも1人や2人はおる。多い事はないけど、

男のイロも珍しゅうない。堅気の感覚では、理解できんけど、任侠界で生まれて育った娘さんは心得てる。

そやから、鬼頭の傘下で年頃の娘のおる組あたっとるんや・・・・」

島津の言葉を哲三が引き受ける・・・

「嫁のほうは何とかする。問題は龍之介自身や・・・・あいつが嫁をないがしろにせんよう、愛するまではいかんでも、

せめて大事にしてくれへんと・・・・」

ふー・・・・・

ため息をつく伊吹・・・

「つまり・・・龍さんとの相性も必須ですねえ」

 

 

 

しばしの沈黙・・・・

そこへ由布子夫人が緑茶と和菓子を運んできた・・・・・

「まあ・・・茶飲みや・・・」

島津は自分の茶碗を取りつつ勧める・・・・

 

無言で茶を飲む3人・・・・・・

 

 

「でなあ、伊吹。龍之介は・・・どんなタイプが好みなんかな?」

哲三が沈黙を破る

「さあ・・・・」

「あるやろ・・・タレントでいうとこんなタイプとか・・・・」

伊吹の見るところ女性に興味を示さない

「若ぼん美人やから、チョットやそっとじゃあ・・・・」

島津が口を挟む

「私の考えでは・・・紗枝様のタイプなら龍さんが違和感なく迎えられるのではと・・・」

ああ・・・

ぽんと手を打つ島津。

「男は皆、マザーコンプレックス抱えとるからなあ」

「そうか・・・・紗枝か・・・」

哲三も頷く・・・・

なにも恋愛対象でなくてもいい、母代わりに慕えるならそれでも

「年上がええかな・・・」

「歳がどうのこうの・・・というより、落ち着いていて思慮深い人ということですねえ・・・」

伊吹の言葉に島津も哲三も頷く・・・・・

「やはりお前に相談してよかったわ。 でやなあ、まさかとは思うが・・・龍之介、女に対して不能とか・・

そんなんじゃ無いやろなあ」

哲三の第一の不安が実はそれである・・・・

「それは・・・・・・私には・・・わかりません」

「ちなみに・・・お前はどうなんや?」

ぶっー

飲みかけの茶を拭く伊吹・・・・

「ぼんはデリカシーがないなあ・・・そんなこと藤島に聞くなよ。こいつの過去に女がおったと思うんか?」

「それでも、思春期に女性タレントのブロマイド持ち歩いたりとか・・・そういう・・」

「ないない・・・若ぼんみたいな美人が傍に居るのに・・・」

「!!!何!ほんまか?そんな頃から龍之介をそんな目で見とったんか?」

「組長!兄さんも!いい加減にしてください!私はロリコンと違います!」

・・・だから、正確にはショタなんですが・・・・・

怒り爆発の藤島伊吹

彼の思春期が大いに気になるところである・・・・・

 

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