京都旅行 3
31日までは死ぬほど忙しかった
「変なことになっちゃったねえ・・・・」
龍之介は、何がなんだか判らないまま手伝っている。
「別に・・・いいんですけどねえ。旅行も・・・親睦深めて。でもなんで、こんな時に・・・」
安田が泣き言を言う
「留守、守る方の身にもなってくださいよ。」
「もうええ。言うな」
一番プレッシャーの南原に愚痴を止められる
「島津の兄さんも、考えがあってのことや。それに、ぼんにもこの次期、親父さんとゆっくり話し合うのもええんとちゃうか・・・
でなくても8代目修行始まるんやし・・・」
東京に行ってしまえば、また会う機会も少なくなる。
そう思うと行くなとは言えない。
もう決まったのだから仕方ないのだ・・・
もうひとり・・・・
忙しくなった人物が・・・・・
京都旅行の手配に追われる宮沢だった。いきなり決まったので彼も大忙しだ・・・・
「見物より酒盛りしようかあ?」
脇であれこれ口を出す島津・・・・・
「景色のええとこで酒宴もええなあ・・・・」
酒盛りに賛成な哲三・・・・・
「嵯峨野あたりで静かに過ごすのはどうですか・・・酒盛りは、ぼんが嫌がりはりますよ。家のほうも、そちらの方ですし・・・・・」
仕事を増やされて迷惑している宮沢だった・・・・・・
とにかく・・・・・・・
怒涛の忙しさを越えて、鬼頭組の大幹部親睦旅行は幕を上げた。
「ほな、行ってくるわ・・・」
明るい島津の声と共に宮沢の運転する車で5人は旅立った・・・・・・
「私事で旅行なんて久しぶりやろ?」
島津は哲三に聞く
「新婚旅行以来ですか・・・その後は、なんやかんやと忙しゆうて・・・」
「新婚旅行か・・・新婚旅行な・・・」
島津が伊吹をちらっと見る・・・・
「・・・・なんですか?」
「新婚旅行、まだ行ってないやろ?」
「兄さん!」
「いっつも一緒におって・・・新婚旅行せなあかんのか・・・」
哲三も口を挟む
「悔いのないようにな・・・どんだけかんばっても悔いはある。そやから、今できることは目一杯しとけ。」
島津は最愛の妻を若い時になくしている。今の夫人に会うまで20年もひとりで過ごしてきた・・・・
そんな彼の言葉は重みがあった。
「なあ、ところで・・・与一ちゃん、何聞いたんか教えてや〜上の藤島の部屋から、なんか聞こえてきたんやろ?」
100m先の針の落ちる音を聞きのがさないという宮沢の聴力・・・ここまで来るとほとんど障害者並みである
”過ぎたるは及ばざるが如し”
だから彼はずっとその能力を隠してきた。そしてだんだん、見ざる聞かざる言わざるのポーカーフェイスになった。
「言いません」
「若ぼん・・・気ぃ付けや・・・藤島の部屋では藤島襲ったらあかんぞ」
(え?)
話の飲み込めない龍之介は島津の言葉にきょとんとする。
「全部、聞かれてました」
「え!?」
驚いた龍之介は伊吹を見る・・・・・
「会議中に宮沢の兄さん、笑いっぱなしなんですよ・・・」
車の中・・・逃げ場のない伊吹が、ため息混じりにそう言った・・・
え?龍之介は宮沢を見る・・・・・
「いえ・・・悪い意味じゃなくて、ぼんは可愛いなあ・・・と。何時までも、ほのぼのカップルでいてくださいね・・・」
宮沢の言葉にも理解不可能な龍之介は、再び伊吹を見る・・・
「ご存知なかったんですか?宮沢の兄さん、異常聴力者です。どんな小さな音も聞こえるんですよ。
それで、あの晩、下の部屋で、聞いてはったんです・・・」
「!え?宮沢さん!何処まで聞こえたの?」
「全部です」
茹蛸になる龍之介・・・・
「その反応やと・・・・最後までヤッたんか?」
島津の容赦ない攻撃が来た・・・・
「いいえ。ぼんの名誉の為に証明しますが、ちゅーしかしてませんから・・・」
「!兄さん!」
耐えかねた伊吹が悲鳴をあげる
とかく遊ばれるこのカップル・・・・・前途多難である・・・・・・
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