京都旅行 1

 

 

あわただしく年末は過ぎて行く・・・・・

龍之介は、伊吹の傍にいても孤独だった。

他の組員も一緒で、自分だけを見てるわけじゃない伊吹を遠い人のように感じた。

(8代目継いだら、こんな感じなのかな・・・・でも継がなければ、伊吹と一緒にいれない・・・)

色んな想いが湧いて来る中、黙々と雑用をこなした・・・・

 

「あれ?兄さん!指輪はめてはる!!!」

事務処理していた伊吹の、左指の結婚指輪が岩崎に見つかった。

「俺が指輪はめたらあかんのか?」

「女でも出来たんですか?」

若い衆は細かい事に敏感である・・・・

そっー

とっさに龍之介は左手を隠そうとしたが・・・・遅かった・・・

「あ〜!!ぼん。この指輪、兄さんとおそろですか?」

安田に見つかってしまった・・・

「ああ、これはねえ・・・・」

困り果てる龍之介

「カップルリングなんですか?」

野次馬のように河野もやってくる・・・・・・

「いくら何でも・・・ぼん、もう ままごとは辞めたほうがええですよ。そんな事してると兄さんが嫁貰い損ねますから」

安田は昔の”婚約指輪”の延長線上と勝手に解釈した。

「そういえば・・・兄さん、こんなに忙しゅうて女と付き合う暇あるんですか?」

岩崎はコーヒーを運びつつ訊いて来る。

「ないよ」

岩崎のコーヒーを受け取りつつ、伊吹は即答する。

「・・・・アッチのほう、どうしてるんですか?」

「なにを?」

しばらく見つめ合う岩崎と伊吹・・・・・

「たまってるでしょ・・・・」

ぼこっー

伊吹の一撃をくらい沈没する岩崎・・・・

「兄さんは下ネタが通じんお人やさかい、そういうこと言うなって、何ぼ言うたらわかるんや・・・」

安田が岩崎を慰める・・・・・

「龍さんの前でおかしな事言うな。まだ未成年やで・・・」

あれ???

安田・岩崎・河野は目を点にした・・・・・

「兄さん・・・何時から・・・ぼんの事、”龍さん”言うてはりますの?」

(あ・・・なんか・・・やバイかな・・・・)

龍之介は無言でハラハラしている

「ああ・・・何時までもぼん、ぼん、言うて甘やかしてたら8代目の修行がでけへんから・・・」

なるほど。3人は納得する・・・・・龍之介は胸をなでおろした

「私らも、そう呼びましょうか・・・」

「好きにせい」

 

(いやだなあ・・・伊吹以外の人に”龍さん”て言われるのは・・)

会話の外で傍観している龍之介はそう思った・・・・・

 

「岩崎さんたち。”ぼん”でいいから・・・その代わり8代目継いだら組長て呼んでね」

隅っこでコーヒーを飲んでいた龍之介が口を開いた・・・・

「まあ。島津の兄さんも、組長の事、未だに”ぼん”言うてはるからなあ・・・」

伊吹が思い出したようにつぶやくと、皆頷きつつ再び作業モードに入る・・・・

 

(こういう話題も上手くかわせないといけないんだなあ・・・・)

ため息をつく龍之介だった・・・・・かなり精神力を消耗していた・・・

 

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