バースディプレゼント 4

 

 

 伊吹の誕生日当日の夕刻・・・・

島津に呼ばれて一流レストランのドアを開けて入る伊吹

すでに島津と龍之介は席についていた・・・・・

「兄さん・・・」

横で立ちすくむ伊吹に島津は席に着くよう薦める。

「取材に来た雑誌記者が”お食事券”くれたんや・・・お前の誕生日とこっちでの再会を祝ってワシが奢るぞ」

椅子に座りつつ伊吹は小声でささやく・・・・

「兄さん、こういうとこは・・そのテの自由業は立ち入り禁止と違いますか?」

はははは・・・・

島津は笑う

「ワシは陶芸家、若ぼんは大学生。問題無しや。あ〜お前・・・あかんなあ。」

(・・・・兄さん・・・・)

相変わらずの島津のお茶目に伊吹は言葉もない。

「心配すんな。お前はそのテには見えへん。バレへんかったらええんや。」

「・・・・なんに・・・見えますか・・・」

「与一ちゃんみたいに、普通のサラリーマンには見えへんなあ」

「弁護士とか、刑事とか、ボディーガードとか・・・」

笑顔で答える龍之介・・・・・すらすらと出てくる割には印象がばらばらである

そうしているうちに料理が運ばれきた。

「2人の邪魔して悪いけど、出資者やから、ご相伴してええよなあ」

「もちろんです」

3人はナイフとフォークを取り、食事を始める・・・・

 

 「藤島。ワシはお前の事、若ぼんと同じくらい大事に思うてる。ただの舎弟とは違う。それやのに今まで充分な事、

してやれへんかったのが心残りでなあ・・・・・」

はははは・・・伊吹は笑う

「いいえ。困った時に相談に乗ってもらえる、心強い味方です。充分お世話になってます」

「お前は今まで頑張ってきたよ。14年前に、ぼんが中学生連れてきた時はびっくりしたけどな。

ぼんはええ拾いもんしたわ。色んな意味で、お前は使える奴や。特に若ぼんにとっては、なくてはならん奴やし・・・

これからも頼んだぞ」

伊吹は頷きつつ笑う・・・・・・

「今年は大判振る舞いですねえ・・・事務所では会食、兄さんからディナー・・・」

「若ぼんからのプレゼントもあるぞ」

「信さん!」

まだ、内緒にしておきたかった龍之介は島津をいさめる

「なあ藤島、天涯孤独とか思うな。ワシらがお前の家族や。血ぃの繋がりがなくても。ぼんも、ワシも、若ぼんも、

南原も皆、お前の家族や。」

「はい、ありがとうございます。これ以上の誕生日の贈り物はありませんよ」

まっすぐ見詰める伊吹の瞳を、島津は笑顔で受け止める。

「でもな、これ以上の贈り物あるよ。なあ?・・・若ぼん?」

「信さん!」

顔を真っ赤にして俯く龍之介・・・・

「まあ、それは後のお楽しみやな」

 

 

 

 

マンションに帰ると、龍之介は買ってきたケーキにロウソクをたてはじめる

伊吹は紅茶を入れて、龍之介に差し出す

「結局、ケーキ買わはったんですね」

「うん。今年は特別だから」

特別、その言葉が伊吹の心を暖かくする。

龍之介はロウソクに火を灯すと、照明を消し伊吹の隣に座る。

いつも向かい合っていたダイニングテーブルで・・・・・

「目つぶって」

素直に瞳を閉じる伊吹の左手を取ると、龍之介はその薬指に指輪をはめる

「いいよ」

言われて目を開けた伊吹は驚いた・・・

「・・・なんですか・・・」

「失礼な、結婚指輪でしょう?」

「指のサイズは・・・どうやって?」

「寝てる間に測りました」

(ああ・・・・・)

身に覚えのある言葉だった・・・・・・

「とりあえず、はめて」

自分の指輪を渡すと、龍之介は婚約指輪を外した。

「はい」

言われるままに指輪をはめる伊吹。

「これで誰も伊吹に手ぇださないよねえ。ローソク吹き消して・・・」

伊吹がロウソクを吹き消すと、一瞬のうちに闇が襲う。その隙を狙って龍之介は伊吹にくちづける・・・・

 

灯りをつけて、何事もなかったように伊吹の迎い側に座る龍之介。

「イベント終わり。略式の結婚式でした」

「結婚式・・・ですか・・・」

自分の左薬指を見詰めつつ伊吹はつぶやく・・・・

「今日が結婚記念日だよ。忘れないでね」

ロウソクをケーキから取り去りつつ、ご機嫌な龍之介

「・・・・そしたらなんですか?いままで・・・私らは・・・婚前交渉・・・・」

「そこ突っ込まないで!その言葉、今時 死語だって知ってる?」

「はあ・・・」

さっさとケーキを切り、差し出す龍之介の手際のよさに固まる伊吹・・・・・

しばし沈黙でケーキを食す2人・・・・・・

 

 

「でも、凄いイベントでした。意外でしたよ・・・」

「そう?」

「私は、また・・・龍さんが自分にリボンつけて”プレゼント〜”とかいってくるかと・・・・・」

「なにそれ〜やだ〜でも、それがいいならするけど・・・・リボンは赤?黄色?やっぱ、首に結ぶんだよねえ」

藪を突付いて蛇を出してしまった伊吹・・・・・・・

 

「・・・気に入らない?」

不安な龍之介は伊吹の左手をとって訊く

「いいえ。最高の贈り物です」

「外したらダメだからね」

「はい」

 

「じゃあ〜伊吹ご希望のバースディプレゼント第2弾!いこう!」

(え?)

首にリボンを結んだ龍之介が伊吹を後ろから抱きしめる

「誕生日おめでとう!」

「はい、ありがたく頂戴いたします」

 

いつか覚める夢でも・・・・・・

 

今が一番大切・・・・・・・・・

 

TOP   NEXT 

 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system