バースディプレゼント 3

 

 

最近、日課になった風呂上りのお茶会。

ダイニングテーブルに置かれた南原のプレゼントをしげしげと眺めつつ、龍之介は紅茶を飲む・・・・

「先越されちゃったなあ・・・」

「これは南原の無言の詫びと祝福なんです」

「いいなあ、伊吹は人気者で。ところで、2つあるうちの1つは僕のものって事?」

「・・・・ですねえ・・・」

「じゃあピンクのほう貰った〜」

「・・・・どうぞ」

しっかりしたり、甘えん坊だったり。龍之介は忙しい・・・・・

「伊吹、あさって何処か行く?食べたいものある?」

「いえ・・・特には・・」

ふぅー

ため息をつく龍之介・・・・・

「つまらない奴だなあ・・・伊吹って」

出歩く事も、遊ぶ事もなく、組の事ばかり手伝ってきた伊吹が少し哀しい龍之介だった・・・・

「しいて言えば・・・何処か行くよりも、ここでこうして龍さんと2人きりで過ごす方がええですけど」

「それじゃあ、いつもと同じじゃない?」

「いいえ、こうして2人きりでいられる時に精一杯2人きりでいたいんです」

この同居生活も大学卒業まで・・・・・・

あと3年半・・・・・長いようでいてあっという間だろう

そして・・・その後は・・・

「そうだね、今のうち飽きるほど一緒にいよう!」

「千年、万年一緒でも私は飽きませんけど・・・・」

ふふっ・・・・・

笑いかける龍之介の笑顔が眩しい

 

 

「じゃあそういうことで・・・早く寝室に・・・」

立ち上がる龍之介を見上げて伊吹は戸惑う

「まだ寝るのは早いですよ・・・」

「寝に行くんじゃないよ〜伊吹が寝室以外でいちゃつかせてくれないから・・・・」

「まさかとは思いますが、前のような事もないとは限りませんから・・・気ぃつけんと・・・」

哲三に踏み込まれたのが、かなりこたえたらしい伊吹。

「だから・・・寝室ならいいんだよね?」

「はい、鍵掛けて。」

「先に行ってるから早く来て」

龍之介の後姿を見送り、カップを洗い終えると 伊吹は水差しを持って寝室に向かう・・・・・

 

 

ドアを開けると、机に向かう龍之介がいた

サイドテーブルに水差しを置いて伊吹はベッドに腰掛ける。

「ねえ、僕は・・・8代目襲名を早めた方がいいの?遅らせたほうがいいの?」

伊吹に向き直って訊いて来る龍之介

「龍さん次第でしょう。襲名のときは姐さんが必要かも・・・」

「卒業したら大阪に帰るよねえ・・・伊吹は・・・鬼頭の家を出るの?」

「情夫(いろ)と同居する事もありますけど・・・そこにいても・・・どうせ・・・」

「いちゃいちゃ出来ないんでしょ?」

「はい」

ふ〜ん・・・・

立ち上がり伊吹の隣に腰掛ける・・・・・・・

「別宅を設けて僕が通う・・・ってこと?」

 (囲われものじゃないの・・・・それ・・)

「ごめん・・」

伊吹の肩を抱きしめる・・・・・

「今この時は天国ですねえ・・・夢ようです。」

「いつか・・・覚めるんだねえ」

「それでも・・・・」

伊吹は龍之介をそっと寝かせる・・・・・

「共に過ごした時間は真実・・・・でしょう?」

先のことに気をとられて、今の幸せを逃してはいけない。

いつか終わる夢だから・・・1日を10日にも100日にもして愛し合う・・・

「それでも、ずっと傍にいます」

(一秒も無駄にしたくない。涙はこぼさない。今は。強くなると誓ったのだから・・・・・)

龍之介は伊吹の首に手を掛けて引き寄せた・・・・

「身も心も魂までも・・・お前の総てを受け取る」

だんだん強くなる龍之介に伊吹は魅かれてゆく。しなやかに、したたかに、潔い強さを身に着けて、

いつか鬼頭組の8代目になるその日を夢見て・・・・・

 

 

 

「貴方に総て捧げます・・・・」

 

 

一緒の時も、離れていても、伊吹は龍之介のもの。その確かさだけが総てだった・・・・

 

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