恋慕 4
部屋に鍵を掛けてルームライトをつけ、明かりを消す・・・・・
なんだかんだ言いつつ伊吹はそつがない。
「ぼん・・」
「こういう場面で”ぼん”は萎えるよ」
確かに。伊吹自信オカンモードに入ってしまう・・・・
「龍ちゃんとか龍君とか〜」
(それも・・・・オカンモード入りします)
「龍・・・さん」
「うんいいねえ・・・主従関係結びましたってカンジするよねえ」
主従・・・・この重みをひしひしと感じる・・・・・
これで確実に表向き伊吹は、龍之介の情夫(いろ)となる・・・
「ごめんね。表向きはどうであれ、事実上僕は伊吹のものだよ。本当だよ」
伊吹は笑って、龍之介の肩に腕を回し、ベッドに寝かせる・・・・
「腕枕から・・・・ですね」
と自分も横たわる。
「もともと、私は龍さんに一生仕える覚悟でしたから」
子供をあやすように龍之介の髪を撫でる・・・・・・
「いいの?それで・・・」
「手の届かんかった高嶺の花が、今こうして自分の腕の中にいるというだけでも充分です」
夢に見続けた最愛の少年の重みを腕に感じつつ、微笑む・・・・・・・
「伊吹・・・」
突然龍之介は伊吹に顔を近づける
(あ・・・・・)
瞬間、唇が重ねられ激しく吸いたてられる・・・・・これが龍之介のありったけの情熱
「これからは僕が伊吹を守る」
総てがいとおしい・・・・・・・14年の年月をかけて、いとおしんできたこの少年のすべてが。
伊吹のパジャマのボタンを外し、龍之介はその肩に刻まれた傷を探す・・・・・
ー3年前の出入り・・・夜中、騒がしくて起きてきた龍之介の目に血まみれの伊吹の姿が映った
「伊吹・・・大丈夫なんか?」
「頚動脈は外れてて幸いでした。病院で縫うて来ました」
父と南原の会話を聞きながら龍之介は、血のついたシャツを脱がされて、代わりの服を羽織る伊吹を見ていた・・・・
「兄さん・・・すみません・・・」
「気にするな。かすり傷や、こんなもん」
南原と伊吹の会話を聞きつつ、疎外感を感じた・・・・・・・・ー
「もう、怪我なんかさせない。」
当時、血だらけの伊吹を見て、どれだけ泣いたか判らない・・・・
母のように失ってしまうかと思った・・・・怖かった・・・・
古傷に龍之介は口付ける・・・・
「龍さん?」
「傷は・・・・舐めると治るから」
(いえ、今更舐めても・・・・それより、こそばいんですが)
犬だ・・・・と思った・・・・
いつも自分を見つけると大きな目を見開いて駆けて来る。何処か小型犬のような龍之介・・・・・
龍之介のくすぐりに笑いがもれる・・・
「龍さんは・・・可愛いですねえ」
「伊吹?」
突然のしかかられて、伊吹を見上げる龍之介・・・・・優しい瞳がそこにあった・・・・
「ギュッてして・・・隙間一つないくらい」
龍之介は伊吹の背中に手を回して引き寄せた・・・息も出来ないくらい強く
肌が密着すると安堵感が増してくる・・・・・そして、自らが求めてやまなかった安堵感はこれであったことに気付く・・・・
「やっと・・・たどり着けた・・・」
稚拙だが激しい龍之介の愛情表現に、伊吹は微笑む。
彼が一目で虜になったこの少年は、日ごとに色を変えつつ魅力を増してゆく・・・
そして今・・・・その少年のイノセントの中に妖しい香を放つ魔性をみる・・・・・・
耳朶を弄っていた伊吹の唇が龍之介の首筋を這うと、伊吹の背にまわされた腕はするっとほどけた
「!伊吹・・・・力が抜けてくよ・・・」
「力抜いてください。相撲とってるんと違いますよ」
「す・・もう・・て・・ひどいなあ・・・」
ルームライトを消され、龍之介の視界が一瞬闇に覆われた
そしてだんだん暗さに慣れてきた目に、月の光が差し込む・・・・・・
龍之介は少し身体をずらして、バスローブの紐を解く
夏の日差しにも焼ける事のない白い肌は、闇に咲く月下美人のように光を放ちつつ、開花の時を静かに待っていた・・・・・
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