恋慕 2 

 

 

ダイニングキッチンの棚からホットプレートは出てきた

「・・・・本当に持ってきてる・・・」

あきれる龍之介・・・・

「とまあ、そういうことですから・・・後ほど」

冷蔵庫に買ってきた食品を入れつつ、伊吹は振返る。

「夕食まで暇だななあ・・・ていうか、夕食早めに食べて、さっさと風呂に入って・・・・・・寝よう」

「5時から夕食は早いでしょう・・・・せめて、6時30分から」

「その30分は何なの?」

突っ込まれると何もいえない伊吹・・・・・・・・

「あ、ケーキカットもせんと・・・」

ふ〜ん・・・・・・

ため息の龍之介・・・・・

「どうして2人しかいないのに丸いケーキ買うかなあ・・・・食べきれないじゃん!ショートケーキでいいのに」

「誕生日は丸いケーキにロウソク立てるって、決まってるんです!」

「誰が決めたの~?」

「世間の常識です」

(頑固な奴・・・・・結構爺ぃだ)

「いくら2人だけで祝うというても、そんなに略式にしてしもうたら、紗枝様に申し訳ないんです。

言うならば・・・私の愛情の表れと思ってください」

と、さっき買ってきたケーキを差し出す伊吹。

「そうか・・・この丸いのが愛情なんだねえ」

目からうろこの龍之介・・・・単純な奴である

「そうですよ。ショートケーキに19本もロウソク立てたら穴ぼこやないですか!」

(はぁ?)

愛情の話から、いきなり現実に戻された龍之介。

(じゃあ、やはり伊吹の誕生日も丸いケーキじゃないとダメだなあ。チョコパイに29本もロウソク立てたら・・・)

いきなり黙り込んだ龍之介に、怪訝な顔で覗き込む伊吹・・・

「何考えてはるんですか?」

「穴ぼこについて・・・」

 

 

 

6時30分・・・・

ダイニングにホットプレートを置いて、お好み焼きを焼く伊吹

「焼きながら食べるのがいいんだよねえ・・・」

ソースをかけて食べる龍之介・・・・・・

「でも、言葉の割にはあんまり食が進んでませんが・・・・」

「うん・・・」

 緊張してきている・・・・

「なんか・・・そわそわしてきた・・・」

「はぁ・・」

「変だなあ・・・・」

「夜行性動物みたいですよ・・・それ・・」

焼きあがったお好み焼きを伊吹も食べ始める

「伊吹は・・・平気なの?」

(・・・・・・・と言われても・・・)

「伊吹って今日もいつも通りだよねえ」

 「あきませんか?」

「なんか、特別って気はしないの?」

(・・・・・と言われても・・)

「あまり追い込まんといてください。緊張してきますから」

「て、言いながら自然体だし・・・・・」

(いえ・・・・表に出ないだけです・・・・・)

 

「あの・・・・自然体は・・・あかんのですか・・・・」

龍之介に突っ込まれて反撃する伊吹・・・・・・・

「僕だけが舞い上がってるみたいで虚しいんだ。なんか、伊吹そんなに僕の事思ってないみたいで・・・・」

ふぅ〜

ため息の伊吹・・・・・・・

「自信ないんですね?」

「自信ある人なんていないよ、きっと。たくさん惚れた方が負けなんだなあ・・・って実感した」

ははははははは・・・・・・・・・

方を震わせて笑う伊吹に龍之介はふくれる

「勝ったと思ってる?」

「いえ・・・・ぼん・・・それは・・間違いなく私の負けです」

「うそぉ〜」

「ほんまです」

「いやぁ〜〜‘絶対僕の負けだって!」

お互い負けを主張するおバカな2人・・・・・・・・

 

「ぼんは・・・かわいいなぁ。でも、どうやったら、ぼんは愛情を実感できるんでしょうねえ・・・・」

まだふくれたままの龍之介はそっぽを向く・・・・

「永遠に無理。僕は欲張りだから。」

やれやれ・・・・伊吹は首をかしげる

「自分のことは よう判ってるみたいですねえ・・・・ぼん、今晩が何かの始まりでも、終着点でもありません。

ただの未来への通過点です。気張らんでいいんですよ。」

「そっか。そうだったよねえ・・・そう思ってたのに日が暮れてくるとなんかねえ・・・」

 

「若いですねえ・・・」

「伊吹・・・しぼんだオヤジみたいな事いわないで」

(しぼんだ・・・て・・・)

 

会話するうちにほぐれる気持ち・・・・・伊吹効果・・・・・・

 

 

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