前夜 3

 

 

夕食の後、片付けを終えた伊吹はダイニングのテーブルでため息をついた。

「疲れてるねえ」

龍之介は紅茶を入れて差し出す・・・・

「井上のせいで疲れました。ぼんの誕生会するとかなんとか・・」

龍之介は笑う・・・・

「そうそう、そういうのあるよねえ・・・・いつもなにげ〜に2人っきりなのに、本当に2人っきりになろうとすると

邪魔されたりさあ・・・・・」

(笑い事と違います)

「こういうのって、イベント式にするのもどうかと思うんだけど・・・なんかねえ、自然にそうなった

つーのがいいんだけど・・・・でも、日を決めないと踏ん切りつかないし・・・・」

今まで相当暗中模索したらしい龍之介の言葉に、伊吹は言葉を失う。

「ごめんね・・・・」

そっと重ねられた手・・・・・迷いの無い眼差し。

「後悔しない自信ありますね?」

「たとえ伊吹の人生、僕が奪っても、その借りは僕が返す。一生かけて。」

(ぼんは、何時しか大人びてきた・・・)

伊吹は、龍之介の本来の強さを垣間見た気がした・・・・・

「ただの子供の遊びじゃないんだ。命がけの契りだ。それを教えてくれたのは伊吹だったじゃない?」

ふっー

伊吹は笑う

「はい。判っていただけましたか」

守りたいものを見つけた龍之介は強くなった。そして、さらに強くなっていくだろう・・・・・

 

 

「ところで伊吹、部屋は僕の部屋だねえ・・・ダブルベッドだし。あ、伊吹は明日からは、ず〜っと寝るときは

僕の部屋で寝るんだよ・・・判った?」

「え?」

「え?じゃないよ〜ヤル時だけ通う、通い婚なんて赦さないよ」

話が飛躍してしまって、ついていけない伊吹・・・・

「毎晩添い寝は必須です。これから寒くなるし。添い寝にはいい季節だね」

すっかり甘えたに逆戻り・・・・・・

「これからまったりは寝室で・・・・いいよねえ・・・それ・・」

(ええんですか・・・・それ・・・ホンマに・・・)

はたして・・・・寝室でまったりできるのか?

(先のことは考えんとこう・・・)

将来の計画を胸に描き、ウキウキな龍之介を見詰めつつ、伊吹は気後れする

自分がへタレだとつくづく思う瞬間だった・・・・・・・

 

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