カウントダウン 4
龍之介がドアを開けると、宮沢と伊吹に支えられた哲三の姿があった。
「父さん・・・」
「一緒に飲んでて、寝てしまわはりました。今晩お泊めしますさかい・・」
「僕の部屋に・・・」
龍之介は自室のドアを開けて促した。
「宮沢さんは?」
東京まで同行してきた宮沢に、泊まるところがあるのか訊く龍之介。
「明日の朝、お迎えにあがります。」
会釈をして立ち去ろうとする・・・・
「どちらにお泊りに?」
泊まるよう薦めようと訊く伊吹・・・・
「島津の兄さんのところに呼ばれてますから・・・」
見たところ、哲三の運転手としか見えない彼は、鬼頭の総ての事情に通じている・・・・
「おやすみなさい・・・」
そういって、出てゆく姿さえサラリーマンっぽい・・・・
「お食事はされましたか?」
哲三を龍之介の寝室に寝かせた後、伊吹はダイニングに入ってきた。
「うん。昨日のカレー温めて食べたよ。今日は父さんと寝るね。」
と自室のほうを振返る龍之介
「嬉しいでしょう?組長に会えて」
「せっかくだから、話したかったなあ」
伊吹は笑って、入れた紅茶を龍之介に差し出す。
「明日の朝でも、話は出来ます。組長もお疲れですねえ・・・」
あれから13年・・・・出会った頃と比べれば哲三は年老いた。
自分も紅茶のカップを持って、ソファーの龍之介の隣に座る。
「伊吹は、酒飲んでも煙草は吸わないねえ・・・」
「ぼん育てながら横で煙草すぅたらあかんでしょう・・・」
龍之介は笑う
「酒は・・・・必須科目です。アルコール弱いと命取りでしょう?」
ああ・・・・・・
イタイ思い出が頭を掠める・・・・・
「ぼんも少しずつ慣れてもらいますけど。20歳になってからですよ。」
「そういう事、守るやくざつーもの変だよ」
伊吹の肩に頭を乗せつつ龍之介は笑う。
「倫理の問題違うて、健康上の問題です。」
「健全なやくざつーのも変だよ・・・」
ケラケラ笑う龍之介を横目に、伊吹は説教をたれる。
「健康管理は大事です。刺青ちゅうのもいけません。肝臓、腎臓にくるっていうじゃあないですか・・・
第一痛いですし。ぼんは したらあきませんよ」
「・・・・そんなこと、考えて入れる人いないよ。伊吹がするなっていうなら、絶対しないけど。」
「今日は久しぶりに親子水入らずですねえ・・・」
「お休み・・・・」
龍之介は立ち上がった・・・・・・
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