カウントダウン 1

 

 

久しぶりに、時間の出来た加瀬に付き合って、彼の部屋に来た龍之介。

「ねえ、誕生日近いよね〜その日、どっか行こうか?」

ベッドに並んで腰掛けた加瀬は、龍之介を見詰める。

「ううん。父さん達、来ることになってるから・・・」

伊吹とのデートを邪魔されないため、嘘をつく龍之介。

「じゃあ・・・なんか欲しいものある?」

「ないよ」

(加瀬に貰いたい物はないよ)

「龍君そっけないねえ・・・いつものことだけど・・・・」

「ごめん・・・・加瀬君も忙しいんだから、僕の事なんか忘れていいよ」

(僕の事そんなにも〜〜)

勘違いして感動してる加瀬俊彦。

「そういえば・・・藤島さんのお見合いの件、どうなったの?」

「見合い相手と、ウチの組の若いもんの縁談まとめて終わり。その後は話、来ないなあ・・・」

「藤島さんて・・・結婚しないの?」

やけに伊吹のことを訊いてくる加瀬に、うんざりしつつ龍之介は答える。

「さぁ・・・今は、そういう気はないみたい・・・」

「て・・・28でしょ?もしかして女嫌い?」

「さあ・・・・」

早く、伊吹に結婚して欲しい加瀬だった

「身体に異常でも?」

「右肩にドスで斬られた傷跡はあるけど・・・3年前の出入りのとき・・・・」

(うっー)

加瀬は、こういうとき龍之介と住む世界の違いを見せ付けられる。

「結婚とは関係ないよね」

「生殖機能に問題があるとか・・・」

(え?)

加瀬を見詰めて固まる龍之介・・・・

「ぼ、僕が知るわけ無いじゃん!そんな事〜まだ確かめたわけじゃあないのに・・・・・」

照れ隠しに加瀬の肩を思いっきり押す龍之介

「え・・・・まだ・・・って・・・」

些細な言葉も聞き逃さない加瀬俊彦・・・・・鋭い突込みを入れる。

「まだ・・・そんな仲じゃあないもん・・・」

真っ赤になって、俯く龍之介に加瀬は青ざめる・・・・・

「まだって?!いづれは・・・そーゆー仲になるって事?!」

「加瀬君〜やだやだ〜」

照れて加瀬をバシバシ叩く龍之介。どこかコギャルのようでもある・・・・

「龍君!!!」

加瀬の大声に我にかえる龍之介。

「ダメだよ・・・純潔は結婚するまで守ろうね。」

龍之介の肩をしっかり掴み、真剣な顔の加瀬に思わず龍之介は頷く・・・・

しかし・・・・加瀬は気付いていない。自分で墓穴を掘っている事に。

「結婚した後なら・・・いいの?」

「だーかーらー!!!!男同士でしょ、君達は〜自然の法則に反してるよ〜」

とことん、ドツボにはまる加瀬。

「僕には・・・伊吹は男でも女でもない、ただの藤島伊吹なんだ・・・・男同士とか関係ないんだよ」

静かな声で、穏やかな顔で、悟りの境地に立つ龍之介に、何もいえない腐男子加瀬俊彦・・・・・・

(負けた・・・・・)

龍之介に後光が見える・・・・・

 

しかし・・・・

それとこれとは話が違う・・・・・・

「龍君、でも必ずそういう仲にならなきゃならないって事は無いでしょう?」

「それが問題なんだよなあ・・・」

考え込む龍之介、ほくそえむ加瀬俊彦・・・・・

「こういうことでこじれて、気まずくなったら困るでしょ?」

「こじれる・・・」

「たとえば・・・攻めと受けのスタンスはっきりさせとかないと、土壇場でこじれるし・・・」

部屋中歩き回りつつ、雄弁を振るう加瀬・・・・・

「攻め・・・受け・・」

「つまり・・・どっちが女役になるか・・・」

ふ〜〜ん

龍之介は立ち上がる。

「考えとく・・・」

(考えるのか!!!)

びっくり仰天な加瀬・・・・・・

「でさあ・・・・なんで、加瀬君そんなに詳しいの?」

どきっ!!!!!

「い・・・妹が・・・」

苦しい言い訳をする・・・・

「加瀬君の妹さあ・・・なんで女の子なのに詳しいの?」

それは世間一般にささやかれる謎であろう・・・・

「・・・・・」

「ありがとう。また来るよ」

答えられない加瀬を置いて、龍之介は部屋を出る・・・・

(なんか・・・ややこしいなあ・・・)

”ちゅーして〜”と日ごろ言っている自分の属性が、すでに受けである事に気付かない龍之介は、思い悩む・・・

考えすぎて疲れる

(伊吹が何とかしてくれるだろう・・・)

そういう結論に達する・・・・・・

やる気があるのか無いのか・・・・・・

 

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