譲れない想い 3

 

 

日曜日の朝・・・・掃除機をかけながら、龍之介はあくびを一つ。

「もうチョット、寝てはったらええのに・・・・」

朝食の準備をする伊吹が笑う・・・・

「休みの日くらい、伊吹を手伝わなきゃ・・・・」

「ええ心がけですねえ」

「ダメ嫁になりたくないから・・・・」

「ぼんは・・・ヨメちゃうでしょ?」

「へ?」

「主人でしょう」

(そうかあ・・・でも・・・嫁がいいなあ)

どうして龍之介が嫁にこだわるのかはわからないが、嫁がいいらしい。

「朝食、出来ましたよ」

ダイニングに行くと、日本の朝ごはん。味噌汁、玉子焼き、煮物、おひたし・・・・

「伊吹ってマメだねえ」

「生き残る為に、何でもしてきましたから」

(やはり、伊吹は嫁なのかなあ・・・ちえっ、ヨメとられちゃった)

 

 

「なんかねえ・・・・判ったよ」

食後、ソファーでくつろぐ龍之介は、隣に座っている伊吹に告げる。

「ヨメになりたかったのは・・・・・伊吹の役に立ちたかったんだ」

「はい?」

何の事か判らない伊吹に、龍之介は続ける・・・・

「尽くされてるばかりの僕は、それでも、いつか伊吹を支えたいって思ってたんだ」

ふっー

伊吹は笑う・・・・・

「その気持ちだけで充分ですよ」

「あてにして無いでしょ?」

「いいえ」

「うそ〜〜〜」

伊吹の肩に頭を置き、龍之介は伊吹を見上げる・・・・・

「それで・・・・最近は”ちゅーして”言わはらへんのですか?」

「えっ・・」

突然俯く龍之介・・・・

「それだけですまなくなると、困るから・・・しない。」

「困るんですか?」

「前は、そんなに意識しなかったのに・・・・なんかねえ」

はははははは・・・・

伊吹は笑う

「青春ですねえ・・・」

「茶化さないで!今度ちゅーする時は、フルコースだからねえ!」

(!!!!!)

固まって身を引く伊吹・・・・・・・・

「いつでも相手してくれるって、言ったよねえ・・・」

「忘れてなかったんですか・・・・」

「僕が覚悟するまで待っててね」

拗ねたように、横目で伊吹を見るその仕草さえも可愛い・・・・・

「ちゃんと覚悟してくださいよ。やりかけて”やっぱりやめる〜”とか言っても、私が止まらんかったら困りますから」

伊吹の逆襲にたじろぐ龍之介・・・・・・・肩を震わせて笑う伊吹・・・・・・・

 

 

 

秋の午後は、静かに過ぎてゆく・・・・・・・・・・・・

 

実を結んだ果実が熟れて落ちてくるのを待つような、そんな・・・・秋の午後・・・

 

 

TOP   NEXT 

 

 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system