任侠道 1

 

 

夏休みが終わり、いつもの学生生活に戻った龍之介・・・・

加瀬は忙しいらしく、とんと姿を見せない。

風の便りでは。バレー部のレギュラーになったとか何とか。

薫子はなりを潜めている。伊吹の見合いがこたえているらしい・・・・

 

激動の時を越えて、穏やかな秋を迎えようとしていた。

 

相変わらずの、食後の伊吹とのまったりタイム。ソファーに並んで座り、お茶するひと時・・・・・

「二人暮しして、半年すぎたね・・」

「まだ半年ですか・・・・」

伊吹には長かった気がする、この半年。

「いろいろあったねえ・・・」

(ありすぎました・・・・)

「まだまだ・・・これからだねえ・・・・」

「はい。」

「この夏の間、色々考えたんだけど・・・やはり、目標を持って進まないとダメだよね。」

頼りない龍之介から、そんな言葉が訊けるとは・・・・伊吹は感動する。

「どうせ鬼頭、継がないといけないんなら、積極的に自分を訓練しようと思うんだ。モデルガンで射撃訓練してみたんだけど

皆に筋が良いって言われたんだ。やれば出来るような気がしてきてさあ・・・」

(モデルガンですか・・・・)

「ほんまもんは・・・重たいですから・・・」

「だよねえ・・・伊吹は・・・いつから、おはじきしてんの?」

ふー

 

 

 

伊吹は遠い昔を思い起こす・・・・・

高校を卒業して、伊吹は組の雑用や使いっ走りをしていた。

組長に預かった書類を島津に届ける為、事務所に行ったその時、

ドアを開けるなり殴りかかられて、その手を掴み、投げ倒した。

ガランッー

足元に、殴りかかった男の拳銃が落ちた。

「藤島!撃て」

島津の声がした

2人の男が島津を捕らえていた・・・・・

「はよ撃て!」

とっさに銃を取り、無我夢中でトリガーを引く

 

「上等や。でかした」

気がつくと、島津が傍にいて伊吹の銃を取り上げた・・・・・

周りに残党がいないのを確かめ、組の若いもんを電話で呼び出す。

「兄さん・・・」

「組にスパイがおってな・・・まんまとやられたと思たら、お前が来てくれて助かったわ。命の恩人や。」

島津を捕らえていた2人と、伊吹を襲った男は柱に縛られていた・・・・

(何時の間に・・・・・)

と言うか・・・・初めての発砲で、伊吹が放心状態にあったのだろう。

「お前・・・おはじき初めてか?」

伊吹は未成年者の為、拳銃はまだ与えられていなかった。

「にしては、ちゃんと足元狙って・・・さすが藤島じゃ」

(いいえ・・・・重すぎて・・・銃身が下がっていただけなんです)

とんだ修羅場に、心で半泣きの伊吹だった。

あれから必要にかられて撃ってきた・・・・射撃練習などしなかった・・・・総て実戦・・・・

 

 

「18の時に・・・いきなり人を撃ちました・・・足元です」

自らの修羅場人生を振返る伊吹・・・・・

「へえ・・・・」

「そういえば・・・・今まで死なんかったんが奇跡です」

あの時、相手も拳銃を持っていた。先に撃たれていたら・・・・・・と思うとぞっとする

「なんか・・・大変そうだねえ」

(ぼん・・・人事違います)

 しかし、龍之介の天然さなら・・・こういう修羅場も、スキップで乗り越えるかも・・・・と伊吹は思う。

まんま天然な龍之介・・・・

 隠れへタレな伊吹・・・・・

 

 結構、最強なコンビである・・・・・・・・

 

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