夏休み 2
残りの夏休みを、鬼頭商事の手伝いにあてることにした龍之介。伊吹と出勤して帳簿の整理をひたすらする・・・・・
「坊ちゃん、わざわざ手伝ってくださらなくても・・・」
安田女史は恐縮する・・・・・
「次期組長の訓練です。」
射撃練習と言い、何故か組を継ぐことに積極的になっている
(どういう心境の変化なんだろう・・・)
伊吹は首をかしげる
ーもっと、鬼頭の事に関心を持とうと思う−
帰るなり龍之介はそう言ってきた
(8代目、継ぐ気になったんかなあ・・・)
継いでもらわないと困るが・・・・・・・
まったりしか頭になかった龍之介の変化に、伊吹は戸惑う
見合いの時の事も、無かったように忘れ去られた・・・・・・
というか、避けているようにも見える・・・・・
ちゅーして攻撃も無い・・・・なにか、振り切るように仕事をしている。
(こうして、ひとり立ちするのかなあ・・・・)
見守ろうと思う。少しの寂しさを感じつつも、龍之介のひとり立ちをサポートしようと伊吹は思う。
傍にいるだけで幸せだと・・・・・
夕食後の紅茶を飲みつつ、ダイニングで、龍之介は伊吹と向かい合って座る・・・
「僕は・・・鬼頭組、継げると思う?」
「継がなあかんでしょう・・・大丈夫です。虎の子は虎、獅子の子は獅子ですから」
「僕は今まで、伊吹に依存してきたんだ。でも、これからは努力するよ。伊吹に嫌われないか、ビクビクするより
伊吹に惚れてもらえるくらい立派になろうと決意したんだ。へタレは自分でも嫌気がさすよねえ・・・
伊吹の相手に相応しい自分になりたいんだ。」
あの事がかえって、龍之介を前向きにしたのならよかったと思える伊吹・・・
で・・・・
「あの・・・私の相手・・・とは・・」
「僕が平常心だったら、何時でも相手になってくれるんだよね?」
え!!!!
(そう来たか・・・)
「でも、今はまだ依存してて、馴れ合いになるから駄目だよ」
ふっー
伊吹は笑う・・・・頼もしい・・総てを糧に伸びてゆく若い力・・・
「はい。待ってます。」
「でもさ・・・・男でも平気?」
「ぼんこそ・・・」
「伊吹だから・・・なんだよ。」
龍之介はそっと、伊吹の手の上に自分の手を重ねる。
「私もです。」
迷いの無いまっすぐな瞳・・・・・何時しか一人歩き出した龍之介・・・・
愛している・・・・
言葉無しで、見詰め合うだけでも信じられる・・・・・
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