見合い 3

 

いつもと変わらない朝・・・

「昨日ごめんね〜先に寝ちゃった・・・」

目玉焼きを突付きつつ、龍之介は何事も無かったように笑う・・・

「あさってまで仕事が込んでて・・・」

「今日も・・・」

「はい」

一気に不安になる・・・・・・

(断るんだったら昨日、1日あればいいよね・・・何?結婚を前提に付き合うとか???)

「すみません・・・・あさってまでです。」

 

 

「・・・くん・・・」

「え?」

気付けば学食・・・・加瀬が呼んでいた・・・

「なにぼーっとしてんの?」

「伊吹が・・・お見合いしてるんだ」

「それが・・・何か?」

「何で・・・・伊吹がお見合いしたら僕が不安になるの?」

「盗られるような気になるんでしょ?」

A定食を食べつつ、正論を吐く加瀬。

「龍君は今まで、藤島さんにべったりだったから・・・・」

(それだけ・・・かなあ)

「ひとり立ちしないといけない時なのかもねえ」

(そうなんだ・・・・)

頷く龍之介の横で、加瀬はいよいよ自分の時代が来たとほくそえんだ。

(孤独になった龍君を、僕が慰めるんだ・・・・)

 

しかし・・・・・

その時は永遠に来ないということを、彼はまだ知らなかった・・・・・・・・

 

 

(ひとり立ちか・・・・)

夜、一人マンションで伊吹を待ちつつ、龍之介は強くなる決意をする。

 

しかし・・・・・・・・・・・・・

 

(伊吹を丸ごと僕のものにしたらいけないの?)

別方向の想いがわく・・・・・・・・・

(身も心も、僕が独占することは不可能なの?)

伊吹には自分しかいないと思っていた・・・・・自信があった・・・・

のに・・・・・・・・・

女ごときに仲を裂かれるのは心外だった

(結婚したら・・・・伊吹は僕としてるように、奥さんと一緒にご飯作って洗い物して・・・・おでこにちゅーして・・・)

ひ〜〜〜ん

ソファーにうつぶせになり、ジタバタする・・・・・

(なんか・・・絶対赦せない〜〜〜!!!)

自分より近い存在が伊吹に出来る事が赦せなかった。誰よりも近い存在でいたかった。

(だからって、結婚するな。なんていう権利は無い・・・・伊吹は・・・伊吹はそれでいいんだろうか?

僕より近い存在を作るつもりなんだろうか・・・)

いつかは自分も結婚して・・・・・

・・・・・・・・・・やはり考えられない・・・・伊吹より近い存在など存在しない。

(なのに・・・・伊吹は・・・・)

涙が溢れてきた・・・・・・・・・・捨てられた猫のように惨めに思えた。

(ひどい・・・・ひどすぎる・・・)

 

ドアの開く音がして、驚いて龍之介は涙を拭った。

「ぼん・・・・」

伊吹が驚いて靴を脱ぎ、駆けつける。

「泣いてはるんですか・・・」

「結婚・・・・するの?」

ふっー

伊吹は笑う・・・・・

「しません」

「じゃあ・・・・明日は家にいるよねえ・・・」

「いいえ・・・明日も・・・」

(どうして・・・・)

声にならない声・・・・・・・・・・だんだん、伊吹に愛されているという自信さえなくなってくる・・・・・

再び涙が溢れてきた・・・・・

 

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