見合い 1
ある夕刻、哲三がマンションに訪れ夕食後、伊吹と二人で出て行った・・・・・
(内緒の話????)
龍之介は一人拗ねていた。
鬼頭商事の事務所。鍵を開け、明かりをつけると伊吹は茶を沸かす・・・・・
「組長、こんなとこでええんですか?」
「ああ、2人っきりで話たいんや」
玉露を入れて、来客用の和菓子を盆にのせ伊吹は応接間のテーブルに置く。
「どうぞ・・・」
「なあ・・・例の話、詳しゅう聞かせてんか」
「三条のバカ息子の1件ですか?」
監視役から得た情報と、伊吹自身の情報を交えて手短に説明した・・・・・・
「つまり、龍之介は まんまと敵の罠にはまったゆうことか・・・世間知らずもええとこやなあ」
「そうでもないですよ、最後の最後、ぼんは死ぬ覚悟決めはったんですから・・・」
「最後のプライドか」
「あの面持ちはホンマ、潔い、惚れ惚れするモンでした。ま、一瞬ひやっとしましたが。少しでも私の出番遅れてたら
と思うと。」
「お前が見て、あいつは見込みがあるというんか?」
伊吹は頷く
「長い目で見て・・・」
ふ〜
哲三はため息をつく・・・・・・
「お前が、わしの息子やったらと思うわ・・・・何であんなに気弱なんかなあ」
「そうでもないですよ・・・学校ではしっかりもので通ってました。生徒会長までされたやないですか」
「元生徒会長の極道て、どないやねん・・・・」
伊吹は笑いをこらえる・・・・・・
「まあ、お前がそういうんやったら、気長に待ってみるけどなあ・・・で、もう一つ。見合いせえへんか?」
「は?」
「わし宛に書類届いとるやろ?」
「そういえば・・・」
伊吹はデスクの引き出しか、ら哲三宛の茶封筒を取り出して渡す・・・
「和子がな・・・・お前に身ぃ固めて欲しいゆうとんのや」
「牧田教授のことですね」
「はっきりゆうたらしいなあ・・・それでも、薫子があきらめられへんというから・・・・」
(だからって・・・・なんで・・・・)
「お前が先にヨメ貰え」
「いえ・・・私はまだ・・・・」
「もう28やろ?湯川組の三女や。おんなじ業界同志で、なんの妨害もないし。22歳で・・・まあまあええぞ・・・」
と封筒から、写真を取り出し見せてきた・・・・・
「ぼんをおいて結婚なんて・・・」
「結婚しても、龍之介に仕えるのに何の支障も無いやろ?」
(そうなんですけど・・・・)
「わしの顔立てて、1回おうてくれ」
物凄く乗り気でない伊吹・・・・・・
「龍之介に感づかれるな。あいつが知ったら、うるさいからなあ」
「でも・・・」
「なんや・・・好きな女でもいるんか?」
「いいえ・・・」
(女と違いますけど・・・・)
「むこうの好みもあるから、絶対結婚せなあかんのとちがう。会うだけ会ってくれ・・・」
「はい。」
「ちょうど、出張で明日から3日間東京におるから、夕方ここに来る・・・・携帯番号はこれ。頼んだで」
気乗りしないまま引き行けた伊吹
「そしたら。わしは昔馴染みと会うことになってるから・・・」
了解をこじつけて、そそくさと退散する哲三・・・・・
「見合いか・・・・」
結婚など具体的に考えた事は無かった。
しかし・・・・・
どうしてこんなにも気が乗らないのか
(俺は・・・変だ・・・)
何故か龍之介の顔ばかり浮かぶ
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