エンゲージ 3
「あれ?何このリング?」
学食で加瀬が、龍之介の婚約指輪を指して訊いた。
「うん・・・ちょっとね・・・・」
嫌な事件絡みもなんのその、伊吹がはめてくれた、その一点で幸運のアイテムに早変わり〜
不安になる加瀬・・・・・・
「もしかして・・・恋人出来たの?」
(婚約者だよ・・)
笑う龍之介・・・・・・・
「え?!マジ?だれ?まさか藤島さんじゃないよね?」
(ぎくっー)
「男同士なんて・・・・ありえないよね」
自虐的な台詞を吐く腐男子、加瀬俊彦・・・・・
「う・・・うん・・そうだよね。変だよねそれって」
心にも無い事を言う龍之介・・・・・・
「カップルリング?」
「ううん・・・買ってくれて・・はめてくれたんだ・・・・」
「!!!年上なの?」
「うん」
(年上・・・・OLか???まさか・・・人妻?!龍君て可愛いから・・・ツバメなのかな)
妄想に囚われている加瀬を無視して、ハッピーな龍之介
(でも・・・・男同士は変なのかな・・・・)
「それホモ?」
薫子に呼ばれたついでに、なんとなく訊いてみた龍之介はホモ発言に粉砕した。
「その・・・男に惚れちゃった友達って誰?」
(僕です・・・)
「ねえねえ・・それじゃあ、二人とも美形なの?ブ男だったら赦せないね〜」
「友達のほうは普通だけど、相手の人は凄いカッコいい人なんだ・・」
「藤島さんより男前?」
(どきっー)
「・・・・おんなじくらい・・・」
薫子はテーブルのコーヒーを一気飲みした。
「じゃあ・・・・しょうがないね。それくらい男前だったら、男でも惚れるよ。」
(そうだよね・・・・やはり・・)
心で頷く龍之介・・・・・・
「私的にはね、”男が好き”てんじゃあなくて、”その人が好き”ならアリだと思うよ。つまり好きになった人が
たまたま男だった・・・・っていうこと。」
久しぶりに薫子のインテリジェンスな発言を聞いた龍之介は、感動していた。
「そうなんだ・・・・」
「でも、悲劇的だね・・・世間的には、報われない恋じゃない?」
ズキッー
痛いところを突かれて俯く龍之介・・・・
「まさか・・・・自分のことじゃあ・・・」
「違うよ!!!」
「だよねえ・・・でも、友達に腐男子がいるんなら龍ちゃん気をつけなさいね。狙われるよ。あんた男好みな美少年だから・・・」
襲われた経験アリの龍之介には、笑えない話だった・・・・・
「とにかく、藤島さんに そのコンサートのチケット渡してね」
出掛けにもう一度、重要用件の念を押された龍之介だった。
(考えた事も無かったけど・・・・僕は・・・ホモなのか?)
廊下をとぼとぼ歩いていると加瀬に出会った・・・・・
「龍君〜ちょうどよかった。借りてた本返すから寮の部屋まで来て」
「うん・・・」
うつろについてゆく龍之介・・・・・・
大学の敷地内に寮はあった。
「入って」
机とクローゼットとベッドが装備されている学生寮。テレビは小型の物を持ち込んでいた・・・・
ベッドに座らされた龍之介は、何気なく置かれた本に目をやる・・・・
「?何の漫画?」
ふと、手にして開いた本にフリーズした・・・・・・
大学生の男の部屋にエロ本まがいのものがあっても、それは理解できる・・・・が・・・
(どう見ても・・・これは・・・男同士・・・・)
「龍君〜!!!」
借りていたロシア文学全集の本を片手に、加瀬が絶叫した。
「・・・・・なに・・・これ。」
「違うよ!それは・・・妹の描いた同人誌だよ。クラスの女の子がほしいって言うから持ってきたんだ」
「加瀬の妹・・・・こんな漫画描くの・・・・」
「うん・・・コミケとかで売ってるんだ・・・やおい本て言って・・・・」
しどろもどろの加瀬・・・・
「ああ・・・・」
うつろにロシア文学全集を受け取り、龍之介は部屋を出て行く・・・・・・
(龍君!!!)
加瀬は絶対絶命だった・・・・・・・
(なに・・・・僕って・・・こういう類のもんなんだ・・・つーか・・・男同士の行く先は・・・ああいうのなのか・・・)
伊吹がしてくれるおでこにちゅーとは程遠い世界のような気がする
(伊吹がアレ以来、お口にちゅーしてくれないのは、伊吹もああいうのに嫌悪感を感じてるからかな・・・・
つーか・・・・伊吹があの時、来てくれなかったら、三条とあんな事になってたの????)
大混乱の龍之介・・・・・・・・・・・・
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