エンゲージ 2
あの事件から3日たった・・・
三条社長は鬼頭商事を訪れ、息子の侘びと、マンションを引っ越した事の報告をした。
「すこ〜し息子さん怖がらせてしまいました。すみませんでした。」
伊吹が頭を下げると三条は慌てた。
「頭上げてください。こちらこそ、鬼頭の次期組長に失礼な事を・・・・」
「その代わりに、これから三条さんとこ、最優先させてもらいますさかい・・・」
「申し訳ございませんでした。組長には宜しくお伝えください。」
菓子折りを置いて三条は去っていった。
「ほんまに、オヤジさんの爪の垢でも散じて飲ませたれ・・・あのバカ息子に」
「取引き・・・打ち切られるかと思ってました・・・」
安田文子は意外な面持ちで、テーブルのコーヒーカップを引き上げる・・・・・
「三条安富は信頼できる男です。アレは手放せません。」
ぼんの事となると、我を忘れると噂の藤島伊吹が、公私の区別をちゃんとつけている。
「店長の事、私 誤解していましたわ・・・・」
「え?」
何のことかよくわからない伊吹・・・・・・
「そうそう・・・井上〜ちょっと来い」
書類整理中の井上を呼ぶ。
「これ、あの時の残業手当」
と白い封筒を差し出す・・・・・・
「兄さん・・・自腹切らはったんちゃいますやろなあ・・・」
「ぼんの必要経費や。ガード費用で落としたから、心配するな。」
「それやったら・・・」
受け取る井上・・・・
「盗聴、盗撮のセッティングしてくれて助かったわ。」
「兄さんは恩人や、何でも言うてください」
盗撮、盗聴をネタに、強請りたかり専門のしけたチンピラだった井上を拾い、鬼頭に取り立てて育てたのが伊吹だった。
以後、龍之介の周辺ガードを担当している・・・・
学校内の監視、マンション外の監視・・・・・龍之介にさえ気付かれないよう500m圏外で見守っている。
今では、彼も部下を持ち、直接動く事はあまり無い・・・・
「でも、兄さん・・・あん時は危険な賭けと違いましたか?ぼんを危険に晒してまで・・・」
「タイミングは逃さへん。ずっと監視してたんやからな。それに・・・ぼんの本性は危機に晒されるたびに現れるんや・・・・」
「で、今回収穫ありましたか?」
「うん・・・・・」
伊吹は遠い目をした・・・・・・・
「プライドの為に死を選ぶ潔さが、ぼんにはある。あの瞬間は危なかったけどな。少し俺が遅れてたら舌噛み切ってた。
しかし・・・・惚れ惚れするほど精悍な面持ちやった・・・惚れ直したわ。」
確かに・・・・井上は思う・・・・あの時の龍之介は男の顔をしていた・・・・
「虎の子は虎や。獅子の子は獅子や。血は争えへんわ」
「ぼんは・・・精神的にまいってたりはしてませんか?」
ああ〜
伊吹はため息をつく・・・・・・
「立ち直り早いわ・・・あの人・・・」
と言うか・・・ふたたび甘えたに逆戻り・・・夜な夜な”ちゅーして”攻撃を受ける伊吹・・・・・
「人は急には変わらんもんやなあ・・・・」
と言うか龍之介の基本”甘えた”は変わらない気がした・・・・・・・
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