エンゲージ 1

 

 

朝、目覚めると頭が重かった・・・・・

「ぼん、おかゆ食べて薬飲んでください」

伊吹が盆に乗せた茶碗と、水入りのコップ、そして二日酔いの薬を持ってきた。

「学校は欠席するよう連絡しました」

ベッドの上で食事をとるなど、おととしのインフルエンザで39度の熱が出たとき以来だった・・・・

「ごめんなさい・・・心配かけて・・・」

「ぼんの心配するんは私の仕事ですから」

龍之介は少し食べた後、薬を飲み横になった・・・・・・

「そしたら休んでください」

何がなんだか整理もつかないまま、重い頭は眠りについた・・・・・・

 

再び龍之介が目覚めたのは夕方だった。

具合はかなりよくなっていて、昨日のことを少しずつ思い返していた。

「そうだった・・・僕は・・舌噛んで死のうとしたんだ・・・」

「あの時はびっくりしましたよ。」

ちょうど入ってきた伊吹がそう言った

「ぼんが、そこまでプライド高いとは思いませんでした。やはり、やせても枯れても鬼頭組の跡取りですなあ」

プライド・・・だったのか何だったのか判らない・・・・

「強くなりたいよ・・・心も・・・・」

弱い自分に失望した・・・・あの時はそんな気持ちだった。

「徐々に鍛えはったらええです・・・」

「見苦しいところ晒したねえ・・・」

伊吹に見せたくない場面だった・・・死んでも・・・・

「事故やと思うて忘れてください」

「僕・・・三条にキスされた・・・・無理やり・・・」

「それは・・・ぶつかっただけでキスと違います。」

「初めてなのに・・・好きでもない奴にされて、自分が赦せなくて・・・」

ベッドの端に伊吹は腰掛ける・・・・

「それで・・・隠さはったんですか・・・」

「伊吹には、知られたく無かったんだ。だって・・・最初は伊吹とって決めてたから・・・」

「ぼん・・・・すみません。私のせいなんですか・・・」

龍之介の瞳から涙がこぼれる・・・・・

「そうだよ・・・伊吹が・・・もっと早くキスしてくれてたら・・・」

伊吹の腕が、そっと龍之介の肩にまわり引き寄せられる・・・・・

そっと・・・そっと・・唇が触れ合う・・・・・

 

「ね・・・違うでしょう」

確かに・・・・三条のそれとは違った。

「今ので三条との事吹っ飛んじゃったよ・・・・」

ドキドキを隠せないまま龍之介は俯いた・・・・

「愛情の無い行為は心に残りませんから」

「そうか・・・」

伊吹は思い出したように、ポケットから婚約指輪を取り出し、龍之介の薬指にはめる

「取り返しました。」

「伊吹〜〜〜」

龍之介は伊吹に抱きついた。

「ありがと〜〜〜」

「指輪を取り戻した事が・・・ですか?」

「はめてくれた事だよ!」

「指輪、盗られんようにはめててください」

「婚約したんだ〜僕達〜」

え?

伊吹は言葉を失う・・・・・

 「ダメだよ〜お口にちゆーした仲なんだから、婚約しなきゃ〜」

「え?!」

 「今度からおやすみ前のおでこにちゅーは、お口にすることになりました!」

 

立ち直りの早すぎる龍之介に唖然とする伊吹だった・・・・・・

 

 

 

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