罠 4
「てんごは・・・そこまでにせんか?」
伊吹が三条の背後で、ドスを構えて立っていた
「伊吹・・・」
安心した龍之介の瞳から、涙がこぼれた・・・・
「ぼんぼん・・・やめんと綺麗な顔にキズがつきますよ」
刃は三条の頬に当てられた・・・・・静かだが威圧感のある声だった。
「・・・・何時の間に・・・」
「盗聴されてたのも、気付かんかったか?」
「!え」
「監視カメラも、つけて行ったんやけど・・・」
「どうして・・・」
「ぼんぼんが、オヤジさんから得た情報つうのは、私が三条社長に流させた偽の情報なんです。
ウチのぼん脅迫してたのは、とうの昔にバレてますよ・・・」
三条は青ざめた・・・・・
「では・・・これは・・・」
「俺のかけた罠や。」
総てが崩れてゆく音がした・・・・・
「証拠が必要やったからなあ・・・盗撮した画像、組長に送らせてもらいます。まあ、指つめくらいですむかどうか・・」
すぐ横にある伊吹の目が三条を威嚇する・・・・哲三が昔、惚れた獣の目だった。
「これが・・・・お前の本性か」
「堅気相手に優しいしてたら、図に乗ってこのザマか・・・・」
伊吹は三条の右手を掴んでドスを翳した・・・
「落とし前はつけてもらうで」
さらに青ざめる三条・・・・・・・
すっー
親指をドスがかする・・・・・・
伊吹はスーツの内ポケットから紙切れを取り出しそこに三条の親指を押し当てる・・・・
「覚書や。拇印やなく、血判押したのはどういう意味かわかってるやろな?」
「はい・・・・。」
「堅気にこういう事、しとうないんやけどな。時々、やくざよりタチの悪い堅気がおるさかい。」
(おとなしい振りしてコイツ・・・とんだやくざモンだ・・・)
脅威の目で、三条は伊吹を見る。
「鬼頭の次期組長に危害加えると、堅気さんでもただでは済まんぞ。今回は未遂と言う事で、これで済ますけどな。」
と伊吹は三条に手のひらを差し出す。
「返さんか・・・」
スラックスのポケットから三条は婚約指輪が通されたチェーンを取り出し伊吹に渡す。
「二度と顔見せるな。3日以内に、ここから引っ越せ。わかったら出て行け!」
三条が出てゆくと、伊吹は龍之介を抱きかかえて寝室に運ぶ・・・・
「伊吹・・・・」
「もう大丈夫です。」
ベッドに龍之介を寝かせると、シーツをかける・・・・・
「怒ってない?」
ふっー
伊吹は笑う。
「何で怒るんですか・・・」
(だって・・・・脅されてたにしても・・・僕は三条に付け入る隙を与えたんだ・・・)
「怒りませんが・・・がっかりしました。ぼんは私には、隠し事せえへんと思ってましたから・・・・」
「言えなかったんだ・・・・」
(どうしても・・・・言えなかった・・・伊吹には・・・・伊吹にだけは・・・・でも、伊吹は言わなくても何でも知っている)
再び涙がこぼれた・・・・・・
(やはり・・・・僕は・・・伊吹が好きなんだ・・・・)
そして・・深い眠りに襲われた・・・・・・・・・
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