罠 1

 

 

 放課後、教授に捕まり、書籍の整理を頼まれた龍之介は、大量の本を抱えて図書室にいた・・・・・・

背表紙のナンバーごとに本棚へ運び・・・・

 

 

(これで終わり・・・)

と安心した彼の背後に人影・・・・

「先輩!?」

一番奥の本棚で、行き止まりで、会いたくない人に会ってしまった。

(どうして、何処にでもあらわれるかなあ・・・)

この場から早く離れたくて、三条の横をすり抜ける・・・・

!ー

腕をつかまれた  

「もう一度出逢えたのは奇跡なんだ・・・・もう、離さない。永遠に」

いくら天然でも、この状態はかなりヤバイと自覚する龍之介。

本棚に身体を押し付けられて、大きな眼がさらに大きく見開かれた ・・・・・

「怖がらなくていいんだよ・・」

(充分怖いんですが・・・・・)

龍之介の頬に当てられた三条の手が 首筋に下りてくる・・・・

「これは?」

シャツの中から、婚約指輪を通してあるシルバーチェーンを取り出す・・・・

「リングをはめないで、首にかけているのは・・・なぜ?」

がっー

その手首を 龍之介は掴んだ

「触らないでください!」

「大事なもの?婚約指輪とか? 」

まとわりつくような粘着質の眼差し・・・・・

瞬間・・・唇を奪われた・・・・

(!!!)

 

どんっー

驚いた龍之介が、膝で三条の腹を蹴り上げた。相手がひるんだ隙に一目散に図書室から飛び出す

 

(何なんだ!!!)

怒りと不快感に翻弄される・・・・・

(セクハラ野郎!!!)

 

「ぼん・・・」

気付くと校門の前・・・・・伊吹が待っていた

「連絡無かったんですけど   遅いから来てました・・・・ 電話・・・とりませんでしたねえ」

「図書室にいたから・・・電源切ってて・・・」

(!)

携帯を鞄ご、と図書室に置いてきた・・・・    

「鞄・・・置いてきた・・・」

「取りに行きはりますか?  

行きたくなかった・・・・もう二度とあの場所には・・・・

「帰る!」

車に乗り込んだ・・・・・  

 

 

龍之介は無言で 夕食をとり 、部屋にこもった。  

首の後ろに擦り傷が出来ていた・・・・指輪はチェーンごと無かった・・・・・

(あの時ぶちきれたんだ・・・・)

と言う事は・・・・・・

(あいつが・・・持ってる・・・)

何もかも忘れたくて、ベッドの上で布団を被って眠ろうとした・・・・

が・・・・・           

三条にキスされた衝撃から抜け出せない・・・・

(伊吹とだって口にしたことなんて無いのに・・・なんであんな奴と〜!!!)

 

「ぼん・・・」

心配して伊吹が部屋に入ってくる・・・・

「何かあったんですか?」

「三条が・・・」

言いかけて言えなかった・・・・     

(こんな事・・・伊吹が知ったらどう思うだろう・・・)

「・・・顔ベタベタ触ってきて・・・気持ち悪かったんだ・・・」

「判りました・・・手ぇまわして何とかします」

「伊吹・・・・キスして・・・」

優しく額に押し当てられる唇・・・・・・

「ちゅーじゃなくて・・・」

声はかき消されてゆく・・・・・・・

「おやすみなさい・・・」

 

龍之介の最大の受難はこの時から始まった・・・・・・・

    

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