受難の日々 3

 

 

 

午前の講義が終わり、龍之介が講義室から出ると、加瀬が講義室前で待ち伏せしていた。

「お弁当あるけど・・・・」

「学食で食べればいいじゃん」

つまり・・・・一緒に昼食を食べようということ・・・

何故か・・・何時からか・・・加瀬は龍之介の時間割を把握していて、昼食時間に講義室前に現れる・・・・

そして・・・いつも、同じ会話を繰りかえしている

 

 

「ねえ、それ藤島さんのお手製?」

加瀬は色とりどりの、女学生のような弁当を指して言う。

「うん。」

中学、高校・・・ずっと伊吹の愛情弁当で過ごしてきた・・・そして今も・・・

「なんか・・・イメージ違うよねえ・・・」

やくざの若頭が弁当を作る姿は、想像できないと思う加瀬。

「伊吹は組のおさんどんもしてたよ。15歳のときから。」

「ハード・ボイルドがエプロン姿で台所に立ってるってどうなんだ?」

「そう?台所にいる伊吹もカッコいいけど。」

「こうしてみると・・・藤島さんてオカンキャラ?」

「そうだねえ・・子供の時はおんぶに抱っこ・・・お休み〜のおでこにちゅーとか。お母さんみたいだったよ」

(????!!!!おでこにちゅー!!!)

そこに過激反応してしまう加瀬俊彦・・・・・・

(僕だって、そんな事したことないぞ〜〜〜)

「い・・・今は、そんな事してないよねえ・・・」

「もう大きいから、おんぶに抱っこは無理かも・・・」

「いや・・・・おでこに・・・」

(あっ!)

俯いた龍之介の頬が赤くなっているのをすばやく察知した加瀬は、青くなった・・・・

(こいつら・・・そんなことしてるのか???)

「おでこだけだよね?お口になんかしてないよね?」

「変なこというなよ!」

照れた龍之介に肩を押されて、危うく椅子から転げ落ちそうになる加瀬・・・・

(ヤバイ!!なんか・・・ヤバイ・・・)

 

「やあ・・・奇遇だね。」

見上げると三条が横に立っていた・・・・

「先輩・・・・」

また、会いたくない人に会ってしまった・・・・・

「同席していいかな?」

答えも聞かずに、もう座っている・・・・

「加瀬・・・俊彦・・・だっけ?」

「三条・・・雅臣先輩でしたねえ・・・・」

火花が散りそうな、敵意むき出しの二人。

無言で食事をする龍之介を見て、満面の笑みで三条は話しかける

「楽しそうに何話してたの?」

「いいえ・・・何でも・・・」

加瀬は不機嫌そうに答える・・・・・

「鬼頭の弁当は、保護者さんのお手製?」

「はい」

加瀬と三条の雰囲気が険悪だった・・・・・

「いいね。お母さんみたいな保護者さんで。」

 

話の弾まない、砂をかむような昼食時間は続く・・・・・・・

 

 

 

放課後・・・・龍之介は校門前の伊吹に車に駆け込む。

「ぼん・・・」

「早く出して」

 

 

「何かあったんですか・・・」

「加瀬君と三条先輩にストーカーされてるんだ・・・」

「え?」

今まで、龍之介に付きまとう者には、さりげなく圧力をかけてきた・・・・が・・・

もう、そろそろ自分で何とか解決させたほうがいいか・・・とも思う伊吹・・・・

「加瀬はまだしも・・・先輩は苦手だなあ・・・」

伊吹も彼には、何かひっかかるものを感じていた。

 「何かあったらすぐ言うてください」

「うん。」

(ぼんはこう見えても、護身術は完璧に身につけてるから堅気相手には心配ないと思うけど・・・)

 

 

それでも・・・ひっかる・・・・・

 

 

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