婚約指環1

 

 

 浴室から出てきた龍之介は、バスローブ姿でリビングの鏡の前に立つ・・・

額の絆創膏をはがし見詰める。

(洗っちゃったら、もったいないし・・・)

「ぼん・・ドライヤーします」

と、伊吹はドライヤーを持ってきて、龍之介の洗い髪を乾かす。

「その絆創膏・・・なんですか?」

さっき剥がした絆創膏が右手にあった。

「なんでもない・・・」

 

「はい、終わりです。」

伊吹はドライヤーを片付ける。その間に龍之介は自室に入りパジャマに着替えて

リビングのソファーに座る。お休み前のくつろぎタイム・・・・・・

「ぼん・・・」

伊吹がやってきて龍之介の前に立つ・・・・

「ん?」

何気なく見上げた龍之介の目に、シルバーのチェーンが飛び込んできた。

男物のシルバーのリングが通されている、シルバーチェーンだった・・・・・

「おもちゃの指輪は、もう外してください」

そういって、伊吹はパジャマの襟元から革紐を取り出し、するっと外して

シルバーチェーンを龍之介の首にかけた。

「婚約指輪その2です。」

「指にはめてくれないの?」

「これは、いつでも破談に出来る婚約指輪です。そういう余裕を持たせときます。」

首のチェーンを握り締めて龍之介は俯いた

「心変わりするかも・・・って事?」

「指にはめるのは、もっと大事な時の為に残しときましょう。」

うん・・・・

龍之介は頷く・・・・・

「ありがとう。で・・・・指のサイズ・・・知ってたの?」

「いいえ・・・昨日の晩、寝てるぼんの指、こっそり測らせてもらいました。」

「そっかあ、でも、時が来たら、はめてくれるよね?」

「はい」

「あっ・・・・おもちゃの指輪返して〜」

伊吹が持ったままの、革紐に通された婚約指輪。

「これは・・・もう、ええやないですか・・・・」

「だめ。大事にとっとくんだから〜」

立ち上がって、伊吹の手から取上げようとして龍之介は、伊吹ごとソファーに倒れこむ・・・・

顔がありえないくらい接近して、昨日のおでこにチューが思い出される・・・・

「おやすみ〜」

おもちゃの指輪を持って、そそくさと自室に入る龍之介を見つつ、伊吹は内心メロメロだったりする・・・・

(かっ・・・かわいい〜〜〜)

 

 

 いつでも破談に出来る婚約指輪・・・・・・・・・・・・・

いつか、龍之介が鬼頭組8代目を継ぎ、結婚した時、このままごとのような遊びは終わる

それまでの婚約ごっこだった・・・・・・・ 

 

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