横恋慕の風景1          

 

 

朝8時40分、F大校門前で車が止まり、龍之介が降りて来る

「ぼん、気ぃつけて・・・終わったら電話してください。迎えに来ますから」

運転席から伊吹が話しかける。

「伊吹も初出勤だね・・・」

「はい、委任状もって顔出してきます・・・」

「またね〜」

去ってゆく車を見送り、龍之介は講堂に向かう・・・・前の方にも新入生がちらほら歩いている。

「龍く〜〜ん」

後ろから声がする・・・・振りむけば、幼馴染の加瀬俊彦。

幼稚園・小・中・高と同じ学校という腐れ縁・・・・・・

龍之介の世話を、何かとやきたがるバレー部のエースアタッカー。

長身の頼れるお兄さんタイプ

「加瀬君もF大だったの・・・・」

あまりの関心の無さ・・・・・しかし加瀬は負けない。

「龍君と同じ所入りたくて、F大志望したんだ」

「ああ・・・スポーツ入学?」

「もういいよ・・・」

龍之介の天然は、昨日今日始まった訳ではない・・・・・

「それより・・・一人暮らししてるんだろ?ご飯つくりに行ってあげようか?」

「ううん・・・伊吹が一緒だから・・・」

え・・・・・・

加瀬は立ち止まる・・・・・・

「藤島さん・・・来てるの?」

藤島伊吹・・・・・幼稚園の頃突然現れ、自分から龍之介の寵愛を奪って行った恋敵。

加瀬は嫌な予感がした・・・

「一緒に暮らすんだ〜」

が〜〜〜ん

同棲・・・いや同居・・・・

夜2人っきり・・・・腐男子の頭の中、様々な思いが駆け巡る・・・・・・

「まさか・・・一緒に寝てないよねえ・・・・」

「うん。寝てくれないんだ・・・一緒に。お風呂も一緒に入ってくれないし・・・」

ボトッ・・・・・・加瀬の肩から鞄が落ちる。

「龍君が・・・誘ってるの?」

(いかん!龍君のあの可愛いおねだり顔で誘われたら、どんな奴でも堕ちてしまう〜〜〜!!!)

「嫌われてるのかなあ」

ははははは・・・・・・

動揺を隠しつつ、笑って誤魔化す加瀬俊彦。

「そうだねえ、あんまりしつこいと嫌われるから、そういうことは言わない方がいいよ。」

「そうか・・・」

(しめしめ・・・・)

素直な龍之介は操縦しやすい。

(しかし、あいつも龍君の事、好きと見た・・・安心できない。何時、理性がぷっんするかわからんしなあ・・・・)

鞄を拾いつつ、考える加瀬。その間、龍之介はかな〜り前方を歩いている。

「龍く〜〜〜ん待って!」

駆け出す加瀬。

彼は龍之介と伊吹の間に、入り込む隙が無いと言う事をまだ理解できていなかった・・・

 

 

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