旅立ち1
大阪のとある駅で、鬼頭組の組員の見送りを受けて一人の少年が旅立った・・・・・
鬼頭龍之介・・・18歳。この度、東京の某大学に入学。一人、東京で暮らすこととなる。
名前からは想像もつかない、華奢な美少年・・・・・・
さらさらの茶髪は生まれつき・・・白い皮膚は陽に焼けても黒くはならない。
大きなどんぐり目は年より幼く見える・・・・
「ぼん、お気をつけて・・・何かあったら私の携帯に電話ください。」
鬼頭組の若頭で、龍之介の世話役の藤島伊吹(ふじしま いぶき)がスーツケースを渡す・・・
「伊吹〜またね〜」
笑顔でスーツケースを受け取る龍之介は、何処か頼りない。
「ぼん・・・・東京まで、お供しましょうか?」
一緒に乗って行きそうな雰囲気に、組のものは動揺する・・・・
「兄さん・・・・」
電車が去った後も伊吹は不安げに佇む
「おい・・・ほんまに追いかけていかはらへんやろなあ・・・」
安田が岩崎にささやく
「わからんなあ・・・藤島の兄さんは、ぼんの為なら組も捨てるお人や・・・」
藤島の側近の南原圭吾がつぶやく・・・・・
「兄さんは、ぼんを15歳の時からお世話してこられた。13年間・・・・
自らの青春、総て投げ打ってお仕えしてこられた。ぼんは兄さんの総てなんや・・・」
・・・・んな・・・アホな・・・・・
あっけにとられる若い衆を横目に伊吹は南原に告げる・・・
「帰るぞ・・・」
藤島伊吹・・・・・28歳。鬼頭組若頭。
黒いスーツに身を包んだ、この背の高い伊達男は、基本クールでコワモテである・・・・・
しかし・・・ぼんの前では何故か”オカン”に早変わりする
彼の弱みを聞かれたら皆が”ぼん”と即答するだろう。確かに、ぼんは極道界のオアシス的存在だった。
あの笑顔を向けられると、誰もが軟化した。
”殺人微笑”と異名をとる武器を持つ龍之介は、周りから溺愛されて育った。
「組長も、ぼんの一人暮らしを赦すなんて、思い切ったことされましたなあ・・・」
車を運転しつつ、南原は伊吹にそう言う・・・
「可愛い子には旅をさせろ・・・やそうや。そろそろ ぼんも次期組長として訓練せんといかんとか何とか・・・・」
後部座席で伊吹は、ため息をつく。
「若い衆が心配してましたよ・・・・兄さん・・・東京について行かはるんとちやうか?って・・・・」
と南原はバックミラーに移る後ろの、若い衆の乗った車を見やる・・・・・
「南原・・・・後は頼んだぞ。明日から、お前が若頭代理や。」
「え???」
「え!!!!!!!!」
南原の嫌な予感は的中した・・・・・・・
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