薔薇獄乙女 最終章

 

 九条高志という人物から連絡が来て、夢幻斎は九条家を訪れた。九条雅彦が他界したとの事だった・・・・

九条家では、25.6の品のいい青年が出迎えた。

「貴方が・・・檜山夢幻斎様・・・ですか・・・」

夢幻斎の18歳くらいにしか見えない容姿に高志は驚く・・・・

「静瑠様は・・・先代様の作品ですか?」

「いいえ。静瑠は私が20年前に創った、第7ドールです。」

(20年前・・・・一体いくつなんだろう・・・この人は・・・)

「雅彦様が亡くなられたのが、今日の朝・・・ですね・・・」

「主治医を呼んで確認されて、弁護士立会いのもと遺言が開封されて・・・」

「遺言に従い、私が呼ばれた・・・」

「はい。養父はまだ、寝室におります。こちらに・・・」

と階段を昇り、奥の部屋に通された。

「さっき、養父とおっしゃいましたが・・・貴方は御養子ですか?」

「はい。養父は身寄りの無い私を引き取り育ててくださいました・・・」

部屋に入ると弁護士が寝台の傍におり、その横には静瑠が椅子に腰掛けていた。

「人形師の檜山夢幻斎様です。」

高志が弁護士に告げた。

「私は弁護士の大池憲次です。この度、九条雅彦氏の死去によって彼の所持品である人形、静瑠嬢の事で

出頭を願いました。」

「遺言には何と?」

「共に棺に入る事をお望みです。」

夢幻斎は静瑠の傍に行くと、顔を覗き込んだ・・・

「静瑠・・・・・」

「檜山様?」

「入れてやってください一緒に・・・・」

静瑠の指から銀のリングを外す・・・隼人のもとに送る時、静瑠にはめたリングを・・・

「静瑠も・・・雅彦様が身罷れた時・・共に行きました・・・この器に静瑠の魂は無い」

弁護士は不振な顔をしたが、高志は何かを悟った様な面持ちだった・・・

 

 

「静瑠は・・・幸せでしたか?」

夢幻斎が帰り際に高志に訊いた。

「幸せだったと思います。養父と、それは仲良くお暮らしでした。傍目には変わった光景に見えたかもしれません・・・

結婚もせず人形と暮らす男なんて・・でも・・・・養父にとって、静瑠様は人形ではなかったんです・・・

病の床に伏した養父の傍に、静瑠様はずっとおられました・・・最後まで・・・少なくとも養父は静瑠様と一緒で幸せだったと

思います。」

 

 

(本当に・・静瑠は幸せだ・・・・愛する人を亡くして永らえる辛さは言葉に尽くせない。共に行く事のできたお前は幸せだ)

九条家を出て、夢幻斎は空を仰ぐ。もうすぐ冬が訪れようとしていた・・・・

 

                              完

 

 

      

          後書き

 

付け足しちゃいました・・・・・

どうしてもあの後、静瑠嬢と雅彦様には幸せに暮らして欲しかったので・・・・

夢幻斎が歳をとらない理由とか、愛する人を亡くしたいきさつとかは、久遠の月で明かされています。

 

 

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