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「洋子さんも、内心はとても心配してたんだと思うけど”慎吾君が一緒なら、大丈夫よね”って電話口で笑ってたんだ」

寿司を囲んで、俊介の骨折話に花を咲かせる三浦進副総監・・・

「母さんにも心配かけちゃいましたね」

苦笑しつつ、湯呑の茶をすする俊介。明日も勤務の3人は酒なしの宴会を繰り広げている。

「俊介の事は俺に任せとけばいいんだ。心配するな」

と威張る慎吾に、進は呆れる。

「お前は介護なんてしたことないだろうが・・・」

「ああ、ほかの奴の介護なんかしないからな〜俺は俊介専用だから」

よく言うなあ・・・呆れ顔で寿司を食している父、進。しかし、慎吾にそこまで言わせることのできる人物が現れようとは・・・

少し前までは考えられなかった事だ。

「でも、助かりました。本当に、何から何まで・・・」

と言いつつ、浴室での色々を思い出して、俊介は言葉を濁す。

「まあ、私も慎吾がここまで甲斐甲斐しく世話するとは思わなかったが・・・見直したよ」

「何言ってんだ〜他の誰にも、こいつに指一本触らせないんだからな〜看護婦に風呂に入れられてたまるか」

え、そこですか・・・不意に俊介の箸が止まる。

「勝手にしろ・・・」

呆れ顔で寿司を食べ続ける進、得意顔の慎吾・・・大切な人たちに囲まれて、俊介は幸せを実感する。

「今回はご心配をおかけしてすみませんでした。今後、気をつけますので」

俊介が、そう締めくくって、一旦宴会はお開きとなる。

「でもまあ、ケガの功名というか〜いい事もあったよなあ?」

進が帰った後、風呂上りのコーヒーを飲みつつ、、慎吾はそう呟いた。

「そうですね・・・」

「あ、俊ちゃん認めるの?」

ダイニングに向かい合っている慎吾が身を乗り出してきた。

「認めざるをえないと言うか・・・慎吾さんには、敵いませんよ」

(敵わないのはお前だよ・・・)

慎吾はそう思う。自分をすっかり虜にしてしまった俊介の存在。

「不思議だなあ」

出会えた事が奇跡としか思えない。さらに父親同士が親友で、相思相愛だったとは・・・・

「これは運命ですね」

「そう言っちゃう?」

はいー俊介の笑顔に、慎吾は限りない幸せを感じる。

「ありがとう、お前に出会えた事、感謝してる」

当時の慎吾はどん底だった。最愛の達彦を鬼頭優希に取られ、自分は最低な行為で達彦を傷つけ自ら落ち込んで・・・

「ただ、俺でよかったのか、今でも不安になるけど」

ははは・・・俊介は大笑いする。

「案外、自信ないんですね。らしくないなあ」

いや、らしい。これが素の三浦慎吾という人間なのだ。と慎吾は苦笑する。

「俺にはお前の親父さんのような献身的な愛情は無理だからな・・・結局、取って食っちまった、その事実は消えない」

父が三浦副総監にした事は果たして最良の事だったのか・・・それは俊介にも判らない。

しかし、同じ事を慎吾にされたら自分は・・・そう考えると胸が詰まる。

「僕は、おじ様とは違うんです」

俊介は不意に立ち上がり、テーブルを迂回して慎吾の横に立つと不意に、向かい合わせに、その膝にまたがった。

「欲しいものは我慢できない。それに・・・」

と慎吾の唇に自らの唇を落とした。そして、まるで別人のように慎吾の口内を貪り始めた。

(俊介?)

控えめで、天然なこの恋人は、時として驚くほどの独占欲と情熱をぶつけてくる。

そして、暗闇では昼間には見せない淫靡な姿を自分だけに見せてくる・・・

そう、稲葉俊介と言う男は純粋なだけの男でも、無欲なだけの男でも無い。そして、そんな彼に翻弄されながら虜になっていく自分を

慎吾は感じていた。

「取って食べたのは僕の方です。経験値が低い割にはなかなか腕がいいでしょう?」

本当に・・・慎吾は苦笑する。

「確かに、毎回食われてるけどな。いや、マジでそんな気がする。お前になら、食い尽くされても満足だ」

俊介はパジャマのボタンを外し、胸をはだけて慎吾の首筋に腕をまわす。

「慎吾さんも、食べて下さい」

白い胸元に薄く色づく蕾を目の前にして、慎吾は俊介の大胆さに戸惑う。

「えらく積極的になったな。ちょ・・・寝室に移動しようか?」

抱きついている俊介をそのまま持ち上げて、慎吾は寝室に向かう。

「最近どうした?」

ベッドに俊介を下ろすと、そう言いつつのしかかる。

「僕、変ですか?」

「いや、妙に可愛いからさ。猫みたいに・・・出会った時は犬みたいだったのにな」

と先ほど食べそびれた蕾を口に含む。

「犬・・・ですか?」

「そう、忠犬ハチ公。でも今の方が魅力的だ、ただし、他の奴にはするなよ?」

「しろって言われてもできませんけどね・・・あっ・・・」

いきなり吸いつかれて俊介は声をあげた。

署の皆は俊介のこんな姿、想像もしないだろうと思うと慎吾は優越感にひたれる。

俊介をやっかんでいた者たちも、骨折してまで手柄を立てたキャリアに、皆、敬意を示している。

(なかなか順調じゃないか・・・)

2人でトップに上り詰めるのもそう遠くはない。慎吾は勝ち誇ったように微笑む。

「まったく、親父が帰ったらすぐにじゃれるんだから、俊ちゃんは悪い子だな〜」

そう言いながら、俊介のパジャマのズボンを下ろす慎吾はいつものマイペースである。

「いつからこんなになってたんだ?まさか親父がいた時から?」

すでに硬くなった下腹部を握られて降伏するしかない俊介がいる。

「そんなわけないでしょう!おじさまの事は言わないでくださいよ〜罪悪感とか後ろめたさとか何げに湧いてくるんですから〜」

「解ってていじめてるんだ。羞恥心を煽るために」

でも・・・俊介は思う。ほかの誰といても、慎吾がそばにいると、早く2人っきりになりたいと思ってしまう自分がいるのだ。

「原因は慎吾さんなんだから、責任とってくださいね」

「あ、それっておねだりしてるの?どうして欲しい?手で?お口で?」

どういう羞恥プレイなんだ・・・苦笑する俊介は悲鳴を上げた。

(ってもう咥えてるー!!答えなんか聞いてないんだから!)

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